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渡辺茂男先生

 昨日のFM軽井沢では、渡辺茂男訳『山の上の火ーエチオピアの昔話』ジーシー・プレス を紹介した。
 アジス・アベバにすむアルハという奴隷が、ハプトムという主人に、火も、毛布もなく、一晩、裸で寒い山の上に立てば土地と家と牛とヤギをやる、といわれて村の古老に相談し、古老が一晩中、向かい側の山の上で焚く火を見つめて寒さに耐え抜く。ところが主人は火を見ていて耐えたのだから、お前は火を使った。約束を破ったのだから、褒美はやらない、と取り消した。そこで古老は、再び一計を案じ・・、という物語の絵本。

 勿論、佐野昌子のおおらかな絵も含めて、この絵本の魅力も語りたかったし、遠い山の上の火を見つめているだけで、そこで自分のために火を焚いてくれている人がいるという思いだけで、寒さを耐え抜くことが出来たというこの物語の第一のテーマについても語りたかったが、私がこの本を取り上げた本当のきっかけは、数年前に亡くなられた渡辺茂男先生の思い出を語りたかったからだと思う。

 1977年に初の国際児童文庫であるだんだん文庫を設立し、1979年に国際児童文庫協会を創設して、たった一年で、発案者でありパートナーだったミセス・ダンがモロッコに去ってしまったとき、福音館の松居会長、当時文部大臣だった永井道夫先生と共に、名実ともに支えになってくださったのが、渡辺先生だった。この先生方の教えがなかったら、国際児童文庫協会を軌道に乗せることは出来なかった。

 それまで、ただ一冊の本として、次々と良い本を紹介し、その中に渡辺先生の作品が沢山含まれていることに気付いてはいたのだが、しみじみと先生の翻訳、先生の絵本の素晴らしさに本当に気付いたのは、亡くなられて、懐かしさでその作品を、落ち着いて読み返せるようになってから、つまり、つい最近なのかもしれない。

 沢山の本の中から良い本を選び出すのは、そんなに難しいことではないが、心に感じたその本の良さを、的確にことばに表すのは、とても難しい。
 本を読む子ども達、子どものために本を選ぶ大人達の心に響くように、これからも、ことばを選んで、学びつつ、ライフワークを続けてゆきたい。