『わにのアーサー およばれにいく』 ラッセル・ホーバン作 ジェイムス・マーシャル絵 偕成社

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 わにのアーサーはお行儀が悪いので、妹のエマにもお父さんお母さんにも、食事のたびに注意されてばっかり。くちゃくちゃ音を立てて噛まないで、物を口に入れたままお喋りをしないで、テーブルで遠くの物が欲しい時は自分で取らないで「すみませんが」といって近い人にとって貰うのよ、と、どれもテーブルマナー以前のマナーばかり。幸いアーサーはエマの友達のアルベルタが大好きになって、お行儀良く食べるようになるが、現実には中々、そんなチャンスはめぐってこない。

 背すじをまっすぐにのばしてきちんと食事できるのは、どこの国に行っても、何歳になっても、「育ちのわかる」、つまり、育ってきた家庭教育のわかる目安。身についた挨拶の習慣と、美しいことば遣いともども、家庭教育の三種の神器。読書習慣もさることながら、必ず家庭で身につけたいものだ。

 この本はそんな下心にお薦めしたい絵本で、せせらぎ文庫にはあるが、どうしたことか偕成社では絶版だという。ギギーンとギターを弾いてアルベルタのために作曲するアーサーのキャラクターは高学年の子どもにも親しまれるし、お母さん同士のグチもあって親の世代にも楽しめる。ジェイムス・マーシャルの絵も、いろいろ描き込まれていて字の読めない子にも読める?のに、こういう本が数年で絶版になってしまうのは、良い本を買わない親たちの責任でもある。かな?