『ビブリア古書堂の事件手帖』 三上延作 アスキー・メディアワークス刊

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 何回かの連続TV小説・・・表現が古い? とにかくテレビドラマで、主演の剛力彩芽とともに評判になった。 古書店の若くて美しい、しかも内気な女主人と、本の背表紙は好きだが長く読んでいると気分が悪くなる、というアルバイトの青年の物語。

 内気な女主人、栞子は、本の話をするときだけイキイキと積極的になり、本に関する知識と関連する推理とは、とても常人とは思えない。一方、アルバイトの青年大輔は、幼い頃のトラウマから、短編小説くらいしか読めない状態で、それでもどこかで本を愛しているので、栞子から本の話を聞くのを楽しみにしている。
 漱石全集から始まって、アンデルセン童話、『論理学入門』、太宰治の『晩年』等、お馴染みの本が次々と出てきて、その作者の私生活であったり、本のたどってきた歴史であったり、誰も殺されず、血も流れないのに、物語から離れられない上質のミステリー。

 本があるとは知らず、ついドラマを先に見てしまったので、書店で見つけても手にとるのをためらっていたが、ストーリーを知らないことを祈って、ついに4巻を買ってしまった。よく覚えている『怪人二十面相』にまつわる物語だった。しかし、荒筋を知っているのに、読んでいて面白い! 読み終わってから図書館に行って、第一巻を借りてきた。

 やはり、第一巻を読んで良かった。 テレビドラマと書かれた文章では、こんなにも質が違うものかと思った。登場人物の設定、主題になる本の選び方、筋を運んでゆく、嘘かホントかわからないけど納得のいくエピソードの数々。本を目方で買ってゆく古書店、紙ゴミ扱いのFURUHONYA が一般的になってしまった今日このごろ、昔ながらの古書店を訪れたくなる。