薬丸岳著『死命』文芸春秋刊

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 昨日、子どもの絵本を紹介したので、今日は大人向き。この本は著者のサイン入りで、薬丸岳氏の父上が、ポンとせせらぎ文庫に寄贈してくださった。明日、せせらぎ文庫に入れるので、今夜のうちに書いておかないと。

 実は7月半ば頃、日曜のFm軽井沢「魔法使いの本棚」でご紹介するために、文庫に入れる前に、この本を田の詩荘に持ち帰り、放送が終わって2週間、文庫に持っていくのを忘れていた。放送で「この本はせせらぎ文庫の本ですから、借りられます」といったので、この本目当てに文庫を覗いた方もあるだろうと思うと申し訳ない。

 薬丸岳氏は江戸川乱歩賞を受賞したミステリー作家だから、作品はミステリーなのだが、社会制度の狭間にある人々など、ちょっと重いテーマに焦点があてられている。だからといって読みにくいのではなく、ミステリーとして軽く読んでしまって、あとから「ふむ」と描かれている人々の生活が心に残ってしまう。

 が、この『死命』は今までとちょっと違って怖い。この本を戴いた頃、ちょっと体調を崩していたので横になって読んでいたら、そのまま眠ってしまって、物語の続きみたいな怖い夢を見た。ギャーっと叫んで目を覚ましたのが午前2時だったので、そのまま眠れば、また夢の続きを見るから終わりまで読んでしまうことにした。4時頃読み終わったら安心して、窓外に小鳥のさえずりを聞きながら、ぐっすり眠ることが出来た。

 ストーリーの面白さに惹かれて、3センチもある厚い本だが3時間ほどで読めてしまう。本の帯に書かれている案内文によれば、主人公は学生時代に恋人を絞め殺しかけて自分の中にある女性への殺人願望に気付き(この辺で眠ってしまって夢を見た)、自分が余命幾許かと知ってから、その欲望に忠実に生きることを決意する。それが、連続殺人への始まりだった・・・という筋書。

 かつて「意訳」という分野を日本に広めて?分厚い本をどんどん読ませてくれたシドニー・シェルダンの作品と、同じようなスピードで読んでしまった!
まだまだ続く、寝苦しい熱帯夜、こんな本はいかがだろうか?