『まざあ・ぐうす』北原白秋訳 角川文庫

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 11月4日の日曜にFM軽井沢で紹介したのだが、この文庫版は昭和5年発刊の『まざあ・ぐうす』。アルス版全集本を底本として仮名遣いや漢字を現代語に直したもの。しかしこれは22版、平成4年に購入している。なんだか古い本だなと思われそうだが、カバーがスズキ・コージ、挿絵は鈴木康司となっているが、中の挿絵も、彼の新しい感覚がぴたりとはまっている。

 北原白秋の詩は中学生の頃から好きで、どの詩集も手ずれがするほど読んでいる。平成4年というと4,50代になっているのに、まだ白秋の名前に惹かれ買ったのだと思う。

 マザーグースの日本語訳は、谷川俊太郎を始めいろいろと出ているが、白秋の訳は、そんな昔と思えないほど新しい。明治の人たちは、どういう風に英語を学んだのだろう。現在のように周囲にたくさん英語のネイティーブスピーカーがいてさえ、なかなか英語のリズム感まではマスターできない。
 ところが白秋の訳は、英語のリズムを体感した上で、日本のリズムに直しているのが分かる。音読してみると懐かしい世界に浸ることができる。

 よく知られている「こまどりのお葬式」、「十人のくろんぼの子ども」、「ロンドン橋」などを含む130の歌が並んでいるが、この本で有名なのはもうひとつ、「日本の子供たちに」と題して「はしがき」に、子ども向けのマザーグースの解説文。平易なことばで子どもに語りかけている。もちろん大人向けにも、「巻末に」として解説があり、翻訳に苦労した点なども書かれていて面白い。何よりなのは、英語の原詩が巻末に出ていること。このことばを、こう訳している、と読み比べてみると楽しい。


  秋の夜長に、ぜひ手元に置いていただきたい本。文庫本なので、コートのポケットに入れて歩ける。ポケットに白秋、ロマンティック気分になれそう?