『サンタクロースって いるんでしょうか?』 ニューヨーク・サン紙 より 偕成社

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 これは1897年9月、というから100年以上前のニューヨーク・サン紙に取り上げられた、バージニアという8歳の少女の手紙に、同社の記者フランシス・チャーチが答えた、有名な社説。

 友人に「サンタクロースなんていない」と言われて傷ついたバージニアに、父親は、サン新聞に聞いてごらん。新聞でサンタクロースがいるというなら、「そりゃもう、たしかにいるんだろうよ」と言ったから、「おねがいです。おしえてください。サンタクロースって、ほんとうに、いるんでしょうか?」と、バージニアの手紙で問うている。

 この、短いけれど真剣な質問に、フランシス・チャーチ記者はまじめに、真剣に答えている。「そうです、バージニア。サンタクロースがいるというのは、決して嘘ではありません。」の一文は世界中で有名になり、支持されている。

 日本、特に東京では、12月になるとあちこちにサンタクロースの姿が現れ、小生意気な、心の貧しい子どもは、「ほら、サンタクロースなんてにせものよ」「クリスマスの朝、枕元においてあるプレゼントは、お父さんか、お母さんがおいているのよ」などと得意になる。
そして、子ども達が少し大きくなると、「実はサンタクロースなんていないのさ、いるわけないだろう」などと、とくとくと底の浅い説明をする馬鹿な親がたくさんいる。

 プレゼントを枕元に置くのは、親の手かもしれない。しかし、それを置かせるのは、遠くから届く大きな愛であり、子ども達に幸せを、というサンタクロースの大きな愛があるからこそ、世界中のたくさんの子どもたちに、何らかのプレゼントが、様々な手段で届けられる。この習慣が日本で盛んになりはじめた頃には、日本の子どもたちにとって、その習慣が必要だったから。その名前がサンタクロースと呼ばれようと、タイガーマスクと名乗ろうと、その人にそうさせているのは、ちゃんと存在しているサンタクロースの愛である。

 サンタクロースのふりをしている人が多いだけに、サンタクロースの存在を子ども達に説明するのは難しいが、まずはこの本が、サンタクロースが実在すると証明してくれている。バージニアのパパのことばを借りれば、新聞社でサンタクロースがいる、といっているのですから「そりゃもう、たしかに」いるに違いない。

 大人が子どもに、まっすぐにまじめに答えている、素晴らしい本。中村妙子訳。ひらがなが多く、ルビも付いているので、幼い子でも自分で読むことができる。