『ゆきひらの話』安房直子作 偕成社

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 今の子どもには、ほとんど馴染みのない「ゆきひら」という小型の土鍋。片手鍋の仲間だが、握りが太めで、真ん中が太く、握りやすくなっている。おかゆなどを、一人二人の小人数のために、ゆっくり炊き込む料理に使う。・・・・と、文章で説明すると長くてわかりにくいが、絵に描いてしまえば、一目瞭然。その、ゆきひらのお話。

 ひとりぐらしのおばあさんが、風邪気味で寝込んでしまいます。猫でもいてくれれば寂しくないのに、と思っていると、台所の戸棚デ、コトコトと音がして、「だれですかー」と声をかけると、「ぼく、ゆきひらでーす」と返事があります。言われるままに戸棚を開けると、何十年も使わなかった行平が出てきます。

 そういえば「ゆきひら」っていう名前は、在原のなりひらを連想しますよね。遊び人の若い男。でも、このゆきひら君は、誠実に、おばあさんを思いやってくれます。「おかゆをつくりましょうか」「おかゆは食べたくないわ」「それなら野菜スープはどうですか」「スープは食べたくないわ。冷たいものが食べたい」。けっこう勝手なことを言っているおばあさんに、ゆきひら君は希望通り、冷たくて美味しいものを作ってくれます。

 何十年も使わなかった「ゆきひら」。断捨離とか言って、使わないものを次々捨ててゆくのが今の流行りですが、使えるものを使いこなしてゆくことができれば、もっと手軽に、豊かな生活が手に入るような気がします。

 田中清代の描くゆきひらが、いかにも暖かく、可愛らしくて、おばあさんにとっては、猫よりも手がかからなくて、役に立つだろうと思います。一人住まいで体調が悪くなって、心細かった一日。台所にしまい忘れていたゆきひらのおかげで、おばあさんは元気を取り戻しました。

 明日、12発21日(日)、11時10分頃からのFM軽井沢、「魔法使いの本棚fr」で、この本をご紹介します。お時間があったら、是非聞いて下さい」。

 今、朝の6時半。4時半に目が冷めてしまったので、ブログを書いていたのですが、眠くなってきたので寝ます。昨日のワインの飲み会に出席したのが間違い。うとうとしたあと、3時ころまで寝たり起きたりで、せっかく東京の夜更かしグセが治りかけていたのに、また今日からやり直し。放送までに目が覚めるかな。おやすみなさい。