『ジヴェルニーの食卓』原田マハ著 集英社文庫

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 先ずは、明けまして おめでとうございます!300枚用意した年賀状、まだ100枚も出していないのに、ブログを開くというのも気が引けるのですが、暮からお正月にかけて、楽しい本をたくさん読んだので、記憶が古くなってしまわないうちに、あ、書き方が間違っていますね、感動が薄らいでしまわぬうちに、というべきでした。大体、この1,2年、私の「記憶」は、古いものの方が鮮やかに、美しくよみがえってくるようになりました。思い出に浸ったりするのです!
「感動」はまだ、比較的長く心にとどまっています。これは、幼いころからの私の癖、というか体質です。「記憶」が伴わない「感動」なので、昔好きだった香だったり、布地の色や手触り、脚にまとわりついたスカートの感覚、着物の裾など、ふと嬉しかった感覚だけがよみがえってくるので、昔の記憶、思い出にふけることはなかったのですが・・・・。感覚的な記憶?も薄らいできたということでしょうか。

 さて、この『ジヴェルニーの食卓』も、感覚的な記憶、と呼べる小説です。小説を読んでいるというよりも、親しい友達の、それこそ思い出話を聞いているような感じです。ジヴェルニーというのは、クロード・モネを中心に、当時の抽象画家たちが集まった町、そしてその古い屋敷が、今もそう呼ばれてそこにあります。パリから列車でも行けるそうですから、せっかくパリに行く機会があったら、ブランド物のお買い物などせずに、ジヴェルニー行きの日帰りツアーに乗って下さい。

 嘘か真か、まるで見てきたように、ピカソとマチスの友情、ドガとモデルの少女とのかかわり、セザンヌと画商、そしてモネと「私」、4つの短編が当時の絵画界を描き出しています・・・・と、書いてしまうと、なんだ、つまらなそう、と思われるでしょうが、絵の好きな人なら、ああ、どうして自分はこの時代に生まれてこなかったのだろうと、真剣に後悔したくなる4つの愛の物語です。巻末に「史実に基づいたフィクションです」とあります。

 京都の御所の何とか門、多分烏丸口?から入るとすぐに橋があり、季節には水面が睡蓮で埋め尽くされます。私はその橋の上で、何時間も人を待っていたことがありますが、そのときモネがスイレンを愛した気持ちがわかったような気がしました。10年程前のことです。

 この本は2013年の本ですから、まだ容易に手に入ります。ちなみに560円。ずっと手元に置きたい本です。