グリム童話『あめふらし』出久根育絵 偕成社

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 グリム童話には怖い、というか、残酷なお話が沢山あるが、この出久根育の絵はなんだか怖い。地に黒を使っているせいもあるが、人も魚もキツネも猫も、みんな白目がちで、もの言いたげである。絵が、絵ではなく、芝居の一場面を見ているように、セリフが聞こえてくるような気がする。
でも、このお話、『あめふらし』は、それほど怖くもない。少し残酷なところもあるけど。

 アメフラシというのは、海に住んでいるナメクジのような生物で、「うみうし」と呼ぶ地方もある。アメフラシが水中で紫色の液を出すと、雨雲が立ち込めるように見える様子から、「アメフラシが岩場に集まると雨が降る」といわれるのだが、これは、アメフラシが産卵のために岩場に現れる時期が梅雨と重なるからなのだそうだ。

 お話が始まっても、アメフラシはなかなか出てこない。昔ある国に王女がいて、お城の高い塔には12個の窓があって、1番目から12番目まで、だんだんに詳しく、よく見えるようになっているので、王女は国中にの出来事を、地面の下まで、とてもよく見ることができた。王女は結婚相手を選ぶにあたって、塔から見ても分からない場所に隠れること、という条件を出し、もし見つかったら、さらし首にする、とお触れを出した。次々とさらし首が増え、97本の杭が並んだので、名乗り出る者がいなくなった。

 ところが3人の兄弟が運試しをすることになり、杭が2本増えた。末の弟は「2度目までは見つかっても許してください。3度目に見つかったらこの首を差し上げます」と条件を付けて、許しを得る。そして、カラスと魚とキツネの命を助け、その代わりに彼らに隠れ場所を探してもらう。

 ん?まだ、アメフラシが出ない?そう、最後の最後に「あめふらし」が出てくる。勿論、子どもの絵本だが、大人が読んでも十分面白いし、絵に、何とも言えない雰囲気がある。

 せせらぎ文庫フェスタが終わったので、今日はマジメに絵本を取り上げてみた。今年のフェスタは、心身ともに疲れ切ったし、フェスタの前に、いろいろなことが起きて準備がほとんどできなかったので、なんだかやった気がしない。これまでと違う子ども達が来てくれたのは嬉しかったけれど、懐かしい子たちは、みんな大きくなりすぎて、見上げないと話ができない。大人になってしまった!あーあ。

 でも、例年フェスタをしていた海の日の連休に、嬉しいことがあった。2人の高校生が現れて、「6年位前に来ていたんだけど、覚てますか」という、幼顔がぼんやりと浮かんだ。アメリカの高校に留学していて、年齢的には1年生だけど、飛び級したので来年受験です、という。もう一人の子は、ハングルが読めない私に、韓国語の絵本を読んで訳してくれた。

 フェスタがあると思って来る子がいるかも、と思って、文庫に行っていて良かった!
来年からどうしようかな、と。いろいろ思い惑っている。