『人生のずる休み』北杜夫著 河出書房新書

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 夏休みだから、でもないけれど、明日のFM軽井沢「魔法使いの本棚」では、この本を紹介したいと思う。
これは、昨年?・・・一昨年かもしれない!この頃、月日のたつのが矢の様どころか、瞬間移動の様に早くて、あっという間に後期高齢者になってしまった。だって、今月は、ではない、もう先月!先月の22日は私の誕生日で、今まで、人生の区切りのような年には、ちゃんと友人を招いて、規模はそれぞれだが、パーティを開くことにしていた。それなのに、後期高齢者記念?の今年の誕生日を、いつの間にか過ごしてしまうなんて!!

 いえ、お電話やらカードやら、FBでもいろいろな方からメッセージも頂いて、その瞬間はとても嬉しかったのに、嬉しさを味わう暇もなく、1ヶ月近くワープしてしまったわけで・・・。

 せっかく、北杜夫夫人が、胸に抱えてきてくださって、「せせらぎ文庫」に寄付して頂いたのに、昨年か一昨年か覚えていなくても、許して頂けるでしょうか。そうですね、一昨年だと思います。昨年のフェスタには、お嬢様とご一緒にフェスタと「はなそう会」に参加して下さって、戴いた他のご本の話をしたと思います。今年のフェスタにも、参加して下さるとの話を聞いていたのに、こちらから何の連絡もできなくて、当日になって「しまった!」と思いだしても、文字通り「あとのフェスタ」。

 そんな曰くの「ずる休み」というエッセイ、これは著者の没後、といっても3周忌だが、生前の著作の中から30余りを取り上げて編集してある。巻末に出典一覧があるが、著者自身のあとがきがないのが不思議に思えるほど、生き生きとして、愚痴っぽい。居間に寛いで語るのを、聞いている感覚で安らぎを感じる。

 年を取るにつれて、躁鬱病をはじめとする病気に悩まされ、私は精神病医だから、ちゃんとわかっている、と自分で精神状態を、ちゃんと?制御している様子が良くわかる。良き奥様と親孝行な娘さん(あたかも、困ったやつらだと言わんばかりに目を細めて描かれているが)に囲まれて、幸せな老後をおくられたのだということが良く分かる。

 これにも書かれているが、夏の間は中軽井沢の別荘に滞在されたので、近頃の軽井沢の様子が、何気なく描かれていて、他の作者が描く「軽井沢」とは、一味違っているのがうれしい。なぜかといえば、この頃は、地図上で「軽井沢」と書かれているところは、みんな軽井沢と呼ばれてしまっているが(あたりまえと言われればあたりまえだが)、ここにはちゃんと、中軽井沢とか、旧軽井沢とか分けて書かれていて、軽井沢の人間としては、この方があたりまえなので、有名な作家なのにもったいないが「仲間意識」で読んでしまう。

 一度、別荘の人と地元の人との交流会で車椅子姿をお見かけしたのだが、根が内気なものだから、ご挨拶もできなかった。奥様とお話しできるようになったのは、残念ながら亡くなられてからだった。「人の命の、つゆの晴れ間をまつものかは」。
 だから、いろいろな方とお話するチャンスを、逃したくなくて、近頃は特に、出られる会合はできるだけ参加するようにしていたら、とうとう過労で寝込んでしまうテイタラク。「元気な振りをするのは、やめなさいよ」と友人に警告されているのだが、明日もFM軽井沢で、元気に「こんにちわ!」とご挨拶できますように。
『人生のずる休み』って、なかなかできない、難しい課題かもしれない。