『さかさかさ』浜野木碧作 鈴木出版

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 ああ、回文の絵本ね、上から読んでもさかさかさ、下から読んでもさかさかさ、なんて呑気なことを言いながらページを開いたのだが、違った!「さかさかさ」は逆さまに置いてある傘だから、緑のグラデュエーションのワンゴリした傘が、風に吹かれて坂を転がりさかさかさになる。つまり逆さ傘。ワンゴリって言わない?どこかの方言でしょうか。英語で言えば rouncible ? スペリングは間違っているかもしれない、エドワード・リアの造語で、まるっこい? ワンゴリの方は、まるっこいより肉厚な丸み、と言う感じの、センスの良い子ども傘、ああ、この文の後に、きっとその表紙の絵が付いてくると思うのですが、なにか品物と言うよりも、生き物めいた傘の絵が描かれている。
 この感覚は鋭い。生き物めいた傘、と見抜いた私の眼力か、と言うより勿論、描いた画家の力なのだが、さかさか言っているうちに、傘の柄から芽が出てくる、そして小さな、すぼめた傘の、緑色のスイカズラのような、軽井沢で言うならアズマレイジンソウのような花がたくさんついて、その花が、雲のくしゃみで、一斉に開いて、空中いっぱいに傘の花が舞う。
 鈴木出版の新しいシリーズ、小さな絵本の最新版だが、このシリーズの中でダントツ、私は一番気に入っている。じっとさかさかさを見ている、ピンクのカタツムリもウイヤツ。