『ぞうのさんすう』あすなろ書房

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 ずいぶん長い間、せせらぎブログにご無沙汰してしまった。その間、色々あったが、東京のお茶の稽古が自宅だけになり、時間的にも精神的にも気楽になった。その代わり、軽井沢でまたボランティアが増えた。増やしてしまった、と言うべきか。学校茶道は裏千家でも推奨しているので、手を抜くわけにいかないし、水曜日が2回空いたわけだから・・・と安易に考えたのが間違えの元。高校生はすぐに色々、思いつくので、対応するのにハアハアいってしまう。でも、孫と同い年の、まるで様子の違う国際高校の子ども達に囲まれるのは楽しい。
 昨日、FM軽井沢の帰りにコメリとつるやで1週間分の買物をして、家に荷物だけ置いて、西区の公民館で彼らに臨時稽古をした。着替える時間もないし、立礼で、臨時だからと洋服のままで行ったら、終わる頃になって「いつもとなんか違うと思ったら洋服なんだ!」と言われた。考えてみたら彼等には、和服でしか会っていなかった。

 そんな慌ただしい毎日の中で出会ったのが、この絵本。伊藤忠財団の助成金で注文した数十冊の中で、岩波書店のだけ入手し難かったらしく、その代わりにと書店から勧められたのが、この本。
 数字アレルギーの私は、無意識のうちに数学関係の本を避けているのかもしれない。若い頃「数に弱いんだから、意識して数学の本を読めよ」と友人に忠告されたので、気を付けてはいるのだが。彼にも先に逝かれてしまった。

 「さんすう」とタイトルにあるように、表紙の絵もソロバンのように物干状の柱の間の4本のコードに、どうやら藁でできているらしい丸い物が・・・。実はこの丸い物は象のうんち。毎日1個ずつウンチをしていた幼い象は、お誕生日が来ると毎日2個ずつウンチをするようになり、毎年1個ずつ増えて、50年目には毎日50個ずつウンチをするようになって、数えることも、ひとつづつ増えてゆくことも、分かるようになっていた。ところが51年目の朝からウンチの数が1個ずつ減り始め、50年目にウンチは0個になる。
始めの50年間に465,375個のうんちをして、残りの50年に465,375個のうんちをして、引算をすると0になる。
「ぞうは しあわせでした。100年 いきてみて、やっと ゼロというものが わかりました。」 そしてウンチをしなくなった象が行くところに向かって、静かに歩み去る。 という哲学的な物語。

 この本に関しては、まだいろいろ書きたいこともあるのだが、ここまで書いただけで、疲れちゃった!
 絵本作家として定評のあるヘルメ・ハイネの復刻版。『おさるのまいにち』でファンになってしまった伊東寛(いとうひろし。数十年前?文庫の集まりで講演してほしい、という口実でお願いしたが、振られてしまった!ファンなのに!)の訳。文章にも、さりげない哀愁があり、大人にも子どもにも読んでほしい本。子どものない家にも、一冊手元に置いてほしい。