『たぬきのばけた おつきさま』小野かおる絵 鈴木出版

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 せせらぎ文庫フェスタも無事に終わり、今年は久しぶりに子どもの参加者も多く、「はなそう会」特に最終日の集まりは、人数も話題も充実していた。
 そのあたりは第14回せせらぎ文庫フェスタ報告書、として後日出すことにして、今日は久しぶりに、絵本の紹介。
 似たようなタイトルのお月様の絵本が、最近同じ鈴木出版から出たが、それを見て、こちらの絵本の方が良いような気がして、取り上げてみた。小野かおるさんの絵本は久しぶりで、不思議なことにこの本を見ていると、小野かおるさんの眼鏡と優しい笑顔が心に浮かんでくる。

 山の上の小さな村の交番のお巡りさんは、動物に親切なので、動物達にも人気がある。ある夜のこと狸が現れて、おらの好きな狸の女の子を助けてあげて、という。母親を亡くした女の子が、泣いてばかりいて話も聞いてくれないのだと言う。狸は月に化けて女の子を慰めたいというので、お巡りさんが女の子をお月見に連れ出すと、お月様から尻尾が生えたりしているものの、見事なお月様。ところがその月の表に、亡くなった女の子の母親が現れ、それが消えると、お巡りさんのお母さんの姿も映し出される。どうやら交番の机の上にあった写真を、狸はちゃんと見ていたらしい。

 9月10月の日本は、とりわけ月が美しい。満月を見ると、ついつい懐かしい面影を、その表に重ねてしまう。