『タルト・タタンの夢』近藤史恵著 創元推理文庫

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 今、『海外子女教育』誌8月号の「子どもの本棚」の原稿を書き終えたところ。本当は先月このブログで紹介した『チェダーチーズ亭のネコ』を紹介したくて、原稿を書き上げたところで、絶版です、と編集からNOがでた。困るとすぐ、お料理関係のミステリーに逃げるのは私の弱みだが、お料理がテーマになっていると、読んでいる間、最低限、美味しいものを食べた満足感があるので、どの年代にも外れが少ない。疲れていると、ついついお料理関係の軽い読物を買ってしまうので、そういう本が集まっているのかも知れない。
 タルト・タタンはご存知のように、ケーキの名前だが、名前を聞けばぼんやりと、その形が思い浮かぶ程度で、あれとこれをこう混ぜて、こうして焼くと、こんな風においしく仕上がる、とまでの知識はない。ところが、この本を読むと、メニューでお馴染みの、フォン・ド・ボーだの、ガレットだのというカタカナが沢山出てきて、いろいろ説明してくれる。
 もちろんこれがこの本のメインではない。『タルト・タタンの夢』のストーリーも今、原稿に書いたばかりだから、ここには書かない。だって、続けて2回も書けないわ。楽しい短編が表題を含めて7つ入っているのだが「ガレット・デ・ロワの秘密」は、ガレットの中にフェーブという人形を入れて、当たった人が王様になるというパーティゲームで、焼きあがったガレット・デ・ロアに確かに入っていたフェーブが、切ってみるとなくなっていた、という事件。青春時代の出来事の謎が今、解けるのだが、時がたっているのが哀しい。甘酸っぱい短編。どの話も文章の運びは楽しくて、声に出してフフフ、くらいは笑える。
 時間がどんどん無駄に過ぎてゆく今日この頃、こういう本がもっと欲しい。