『チェシャーチーズ亭のネコ』カルメン・アグラ・ディーディ&ランダル・ライト作 東京創元社

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 これもまた昨日、バロンの美味しいお弁当と一緒に、万里先生から届いた本。面白そうだから、7日のFM軽井沢は高楼方子のより、こっちにしようかなと、読み始めてしまったのがいけなかった! 疲れていて、眠たくてしようがないのに、ストーリーにひかれて、とうとう最後まで読んでしまった。今日もまた、夜が明けた。

 イ・オールド・チェシャーチーズ亭は、今でもロンドンで営業しているというのだが、本当だろうか??? 早速ロンドンで暮らしている若い友人に、ラインで問合せた。英語で読むと2,3日かかりそうだ、などと言っているが、彼女も本が好きだから、きっと読み始めたらその日の内に読んでしまうに違いない。英語の力は、今回もまた何やらの能力テストにパスして昇進するとのことだから、ネイティヴに負けていない、と思って応援している。

 そのイ・オールド・チェシャーチーズ亭に、ネズミ捕り役として雇われた野良猫スキリーの物語だ。ネズミ捕り役ではあるのだが、実はこのスキリー、ネズミは食べない、というチーズ好きの猫で、これは猫としては恥なのだそうで、チーズを食べているところを仇の野良猫ピンチに見つかりそうになって慌てたりしている。
でも、これはウチの猫、影虎の個人情報だけれど、彼もチーズは大好きで、私が好物のヤギのチーズをちびちびと齧っていると、すぐに見つけてすり寄ってくる。私はチーズは猫にも好物だと思っているが、この本は、猫はチーズよりネズミが好き、というのが常識だった時代の話である。何しろ、あのディッケンズがわき役として登場するくらい昔の話だから、どうも実話だったのではないかと思っている。

 ストーリーを書いてしまってはつまらないから書かないが、野良猫のスキリーと、読み書きのできるネズミのピップとの友情が、とりわけ心にしみる。傷ついたピップを両腕に抱え込んで眠り込むスキリーは、本当に優しい。ところがその姿を仇の野良猫ピンチにみつかり、誤魔化すために眠っているピップを投げ飛ばさねばならない羽目に陥る。

 猫とネズミの物語なのだが、傷ついた大烏も登場する。ロンドン塔の庭に大烏(Raven)が飼われているのは40年前も同じだったが、その頃は必ず13羽の大烏がいて、足りなくなると補っていた。ここに3羽となっているのは作者がアメリカ人のせいか、それとも近頃は3羽しかいないのかもしれない。大烏の担当役人がいるそうだから、3羽よりは13羽である可能性が高い。こんなどうでも良さそうなことが積み上げられていて、この物語を真実だったのではないかと思わせる。

 ああ、ストーリーを書きたいなあ。いやいや。たとえばトゥというチビネズミが出てくるが、これは Too much のToo。ツーと訳さずにトゥと訳してくれている事にも感謝したい。山田順子訳、である。
絵はバリー・モーザ。この絵がまた丁度良い。このストーリーで、この文章でアニメチックに描かれると、物語の雰囲気も変わってしまうし、〇〇まじめに暗い絵を描かれても壊れてしまう。
創元社と東京創元社がどう違うのか分からないが、これは久しぶりに、子ども達にも我々にも楽しい本が現れた。

 スペイン料理を習っていて良かった!万里先生に感謝。