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2010年4月

2010年4月 5日

DoDaDancin' 槇村さとる作 集英社

 昨日の日曜日、FM軽井沢「魔法使いの本棚」は、数学教育学会で反響があった、という話から始まった。大阪教育大で、絵本作りを教育手段に取り入れているとのことで、作品集、というより、論文集のような体裁で、4年分の作品集を読むことができた。いずれも新鮮で、力作ぞろい。すぐにでも絵本になりそうな作品もある。

 近頃の若者は読解力に欠けるとわかっているのだから、高校生の数学指導にも絵本を使ってもらえば、もう少し日本の数学のレベルが上がるのではないだろうか。普通に考えれば、普通の教科書の代わりに絵本を使うといえばレベルが下がると見るのだろうが、漫画と違って優れた絵本なら、プラスアルファーの力が大きい。そこまでわかってもらえたかどうか、多少不安だが、リアクションがあっただけでも嬉しいのに、送られてきた絵本の卵が、かなり大きくて養分も溢れていたのがとても嬉しかった。

 放送のあとバレエを見に行くので、バレエにかこつけて初めての漫画、バレエ漫画の 『DoDaDancin’』 を取り上げた。一緒にバレエを見に行く友人がまとめて貸してくれたもので、アキレス腱を切った入院の2週間に9巻まで読み、今回は続編の「ヴェネチア国際編」という国際バレエコンクールへの練習風景、8巻のうち6巻までを読んだ。
 バレエ漫画は、本当に絵が大切で、トウで立っているのにあり得ない重心で描かれていたりすると、見るだけでしらけてしまうが、槇村さとるの絵は、いかにもバレエ的で、写真よりも躍動感があり、素直に楽しめる。

 子どもを漫画しか読まないような子にしないために、一時的に飽食状態にするのも良いと話したのだが、それには家庭ぐるみの協力が大切。我が家がその点成功したのは、家族4人が揃って同じ本の読み回しをした点が良い結果につながったと思う。どんな分野の本でも親が読まなければ、子どもに良い読書習慣をつけるのは無理。

 放送を終えて、久しぶりにジゼルを観に行った。5大バレエの中では小品ながら、私の一番好きな曲だ。村娘のジゼルが、幸せな気持ちで占う花占いと、恋人に裏切られたと知って、心を狂わせて繰り返す花占いの仕草と、霊になってから踊る同じフレーズの曲が、いつまでも心に残る。

 五反田のゆうぽーとホールは劇場として落第!足弱な人に冷たくて、見上げるような外階段の横のエスカレーターは下りのみになっている。同じビルのホテル側からも入れないように、ホテルのエレベーターは嘗てはつながっていたゆうぽーとホールの階には止まらなくなっている。
 中に入ると案内人も不親切で、私が荷物と格闘しながら劇場内の階段をがくんがくんと降りているのに、足が悪いと誰でもわかるのに、澄まして懐中電灯で照らすだけで、持ちましょうかと声もかけない。あんなホール、もう見に行くものかと思うけれど、5月22日、23日と『眠れる森の美女』があり、アントン・慶が魔女カラボス役を踊るというから、うーん、カートを置いて、杖を持ってでも観にゆこう。

2010年4月17日

ミステリアスな一冊(先週のFM軽井沢。ハメットとヘルマン)

 一句、できました。「春の雪 ひねもす ぽたり ぽたりかな」。またぁとか言わないで!起きてみたら、一面の雪!銀世界、などというシャープな感じではなく、春の雪は積もっていても温かい。家の中も昨夜の降り始めよりずっと暖かくて、今朝は8時までぐっすり眠ってしまった。
 トントントン、というノックの音で起こされ、出てみても誰もいない。雪の上に足跡もない。これだから私は雪が好きだ。何かあれば、跡を見ればすぐ分かる。で、ノックの主は雪。落葉松の枝で溶けた雪が、トタン屋根にトトトト、と落ちる音。どの木も枝に10センチもの雪が積もって重そうだが美しい。その雪が暖かい朝の光に少しずつゆるんで、かたまりのまま、ふわり、ぽたり、と落ちてくる。10センチずつのかたまりが、ぽたりぽたりとおちているから、冒頭の句である。やっとわかった?ひねもす ふわりふわりの木もあるの。

 さて、先週のFM軽井沢では、不思議な本を紹介した。ダシール・ハメット『闇の中から来た女』集英社。ハメットらしいハードボイルド。ストーリーを書くわけにはいかないが、ルイーズという女と、ブラジルという男の物語で、熱中して読んで、読み終わって「ひとつの人生を読み終わった」というそこはかとない満足感が残る。良い本といっては表現がおかしいかもしれないが、1200円という代価を支払うだけの充足感は充分に得られる。

 では、何がミステリアスか? 個人的なことだが、我家にはあり得ない本なのである。私と次男は、単行本はほとんど買わない。良い本ならきっと文庫本になるから、それまで待つ。(『ハリーポッター』みたいに、文庫本にしないというのはルール違反な気がする。買ったけど!)。長男も単行本はドキュメンタリーのようなものしか読まない。息子達の父親も、そんな本は知らないという。
 この本は何年か前に現れて、2階に行ったり、階下に来たり、本棚に横になっていたりしていたのだが、いつの間にか居間の目に付く位置を転々とするようになった。10年近く見ているので、読んだような気になっていたが、数日前読み直す気持で開いてみたら、まだ読んでなかった!
 こういう本を、唯一単行本で読みそうなのが、1984年に亡くなった母で、SFやミステリー、何でも読む人だったし、字の大きい単行本を読んでいたから、母が買ってきておいたのかもしれないと一度は納得した。しかし、奥付けを見ると、発行されたのは1991年である。さて、誰がこの本をここに置いたのか。

 この本にはもうひとつ、嬉しい不思議もあった。出会いである。
『闇から来た女』船戸与一訳 の「訳者解説」に、ハメットと一緒に暮らしていたリリアン・ヘルマンが与えあった影響について述べられているが、そこにヘルマンの自伝『眠れない時代』小池美佐子訳が2ページ近く引用してあるのだが、この本がせせらぎ文庫にいれてあるのだ。(今、雪の残る庭に、雉が3羽来ている!)
 せせらぎ文庫の上の方の本棚には、このあたりの第一世代?つまりおじいさんおばあさんの世代に面白いように、多少、マニアックな本も並べてあるが、この『眠れない時代』はその中の一冊。いつのことだか憶えていないのだが、若くて美しいこの訳者に、直接手渡された記憶があり、リリアン・ヘルマンという女性とハメットという粋な男に、興味を持ったキッカケでもあった。

 小池さんは高校の先輩なのでかかわりがないわけではないが、3年上なので同じ時期に通学していたわけではない。元々は男子校なので美人の誉れ高い小池さんは、3年下にも知れ渡っていたというだけで、友達をたどってみても彼女にはつながらなかった。でも、勇気を出して訳者の小池美佐子さんにv直接電話すると、彼女も勿論私を憶えては居なかったが、FM軽井沢で文章も読んでしまうかもしれないので、というと喜んで承諾してくださった。
 いくら話しても、いつ、どこで会ったのか分からないのだが、誰が置いていったのか分からない『闇の中から来た女』という一冊の本が、リリアン・ヘルマンを経由して、知っているけど知らない、話したことがあるのに記憶がない先輩と、出会わせてくれたことをとても不思議なことだと思う。

 実は小池美佐子さんとのつながりはもう一つあって、小池さんのお父様は、私たちの中学校の校長先生で、当時ツッパリのハシリだといわれていた私に、特別目をかけて下さっていたのだ。始まりは何のことでもない。学校の帰りに直接稽古に通うので、お腹がすくからと、学校の売店で帰りがけにパンを買うのが一部の女生徒の気に障って評判になったというだけのことだ。

 隣のクラスの女子に呼び出され、つるし上げに合うという噂が先に先生たちの耳に入ったらしく、つるし上げの当日、校長先生と理事先生が離れた所から現場を見守ってくださっていた。当の私は舞台度胸があったので、2~30人に取り囲まれても一向苦にならず、一段高い所に立って相手の言い分を聞いていたが、熊さんのように行ったり来たりしながら心配して下さっている校長先生が私からは良く見えて、心強かった。話合い?は無事に終り、それ以来、安藤尭校長は、機会を見ては私に話しかけ、道の向こうからでも手を振ってくださるようになった。友人が「いいわねえ、貴女って校長先生のほうから先に手を振ってくださるのねえ」と羨ましがられた。校長先生の愛情がなかったら、私は本当にツッパリになっていたかもしれない。その頃はせめてお年賀状を出す、という知恵もなく、特に親にも話さず、感謝の気持を伝えられなくて、ずっと心にかかっていた。小池さんにチラッとそんな話も出来て、このミステリーはハッピーエンドになったのである。

2010年4月24日

『ダンスのすきなジョせフィーヌ』鈴木出版など

 先週のFM軽井沢では『お話の毛布』(編物お好きなおばあさんが、近所の子どもたちにお話を聞かせるときに坐らせる「お話の毛布」を少しずつほどいて、村の人たちに、いろいろ編んでプレゼントする話)フェリーダ・ウルフ、ハリエット・メイ・サヴィッツ文、エレナ・オドリオゾーラ絵、さくまゆみこ訳、光村教育図書、と『いもほりバス』(いもほりバスは不思議な仕掛けのあるバスで、そのバスでいもほりに行って、大きな大きな焼き芋を掘り出し、噴火口で焼き上がった焼芋をたべる話)藤本ともひこ 作・絵と『ダンスのすきなジョせフィーヌ』(ダンスのすきなカンガルーのジョセフィーヌが、とうとうバレリーナになる話)ジャッキー・フレンチ作、ブルース・ホワットリー絵、三原泉訳、鈴木出版の3冊を紹介しました。この3冊は、今日、せせらぎ文庫に入れます。このところ、せせらぎ文庫には毎週新しい本が仲間入りしています。是非覗いて、どこにあるか、見つけて下さい。

 ジョセフィーヌのついでに、5月3日のマキアサミバレエ団の五反田ゆうぽーとホールの公演「眠れる森の美女」もご紹介。『眠れる森の美女』は5大バレエのひとつ。『白鳥の湖』『くるみ割り人形』と共に、ぜひ子どもに見せておきたいバレエです。今回は、オーロラ姫に呪いをかける悪い魔女カラボス役に前回も怪しい美しさで客席を魅了した保坂・アントン慶を起用。物語性を高めています。アントン慶は、スウェーデン人とのハーフで舞台姿も美しいのですが、内面的にも優しく包容力があって企画力、実行力も伴う素晴らしい男性。今年の3月3日に結婚して私生活も充実。本人の主宰するミヤキバレエ学園と共に、これからの日本のバレエ界をリードしてゆく存在でもあるのです。