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2011年3月

2011年3月 5日

『そら、にげろ』赤羽末吉 偕成社

 2月20日のFM軽井沢は多分、赤羽末吉の『そら、にげろ』偕成社を紹介したと思う。全部で、2,3行しかことばがなくて、絵だけでストーリーが進んでゆく。こげ茶色の着物を尻っぱしょりした飛脚の着物から、海老茶色の雀が逃げ出してしまう。飛脚はその雀達を追いかけて、山を登ったり下ったり、雨が降ってくると、逃げている雀達が、紺の手ぬぐいでほおかぶりして飛んでいる。面白さにつられて、何回もページを繰りなおすと、そのたびに、何か楽しいことが見付かる。

 絵本ばかりではない。幼い頃から、同じ本を読み返す楽しみというのは、ゆったりと時が過ぎて心が和む。若い頃飢えを満たすようにしてむさぼり読んだ小説も、還暦を過ぎて読み返すとまるで違った味がする。食い逃げのように急いで読んだ本は、あちこち忘れている部分もあって、別の意味で面白いが、深々と読んだ文章でも、時がたって読み返すと、まるで違った色合いがある。恋する娘の目には、どんなことばも愛のささやきに思えるが、今考えると、まるで違った意味合いであったり、何をふざけているのだろうと思った若者のことばが、今考えると、案外真剣な愛のことばだったと思い当たったりする。何もかも諦めていたけれど、けっこう、愛と友情に恵まれた人生だったと、心が豊かになる。読み返す価値のある本、思い返す価値のある人生。

 3月2日にせせらぎ文庫にカリタさんのお雛様を飾る為に、時間をやりくりして軽井沢に来たのだが、夜にならない内に着いたのに、やはり家の建物自体が冷え切っていて、一度入ってしまうと外に出る気にならなくて、結局3月3日の朝早く行って、流し雛と一緒に飾ってきた。
 折紙でも、あれくらいの雛人形なら、充分段飾りになる。カリタさんのお陰で、良いひな祭りだった。

 今日のせせらぎ文庫は、お雛様をしまって、流し雛は回収。明日にでも、どこかの神社に納めたい。
英語のポップアップ絵本を、開いたままで棚に飾ってみた。背表紙だけ見ても、英語の読めない子はポップアップだとは分からないだろうから。誰か、貸出ノートに名前が書いてあって、ちゃんと借りてくれた人がいて、嬉しい日だった。せせらぎ文庫もだんだん文庫。だんだんに文庫らしくなってゆくのだろう。私の大切な仕事は、なるべく毎週、とにかく文庫を開くこと。

2011年3月21日

『オバケちゃんと はしるおばあさん』まつたにみよこ作 講談社

 先週、13日のFM軽井沢では『オバケちゃんと はしるおばあさん』を紹介した。DJの宮尾さんに、地震の被災者が元気になるような、というリクエストがあって、良い本なら、読めばどれでも元気になるでしょう、と簡単に考えていたけれど、良い本ならどれでも、というのは、必要条件にも充分条件にも当てはまらないと気付いた。良い本の中には、読むことでそこのそこまで一緒に落ち込んで、そこから浮かび上がって元気や勇気を取戻すという本がたくさんある。
 今回の地震で、本当に最悪の現実の中にいる被災者の方達に、そんな本を薦めるわけには行かない。

 その点、この本は面白い。主人公がオバケだから、もともと明るすぎないのも?良い。そのオバケがびっくりするほど、この走るオバアサンは妖怪じみている。なにしろ自分お体を段ボール箱のように折畳んで箪笥と本棚の隙間に仕舞い込むことが出来る。おまけに走り出すと、高速道路で車を追い越す速さ!「百キロばあさん」と呼ばれている事も分かる・
 こういう荒唐無稽なおはなしは、人を元気にしてくれる。被災者のおばあさま方、百キロばあさんのように、お元気で!子ども達やお母様方も勿論お父様も。

 翌週の昨日は、『海潮音』からルコント・ド・リールの『象』を読んだ。群がる害虫を振り払い、砂を踏みしだいて、象の群が悠々と歩きわたる様子を描いている。文語体の長い詩だからカミカミだったけれど、考えてみたら18日に大きな歯を、歯茎を切って抜歯したばかりで、口が腫れていたのだった!
昨夜、氷で冷しながら、しまった、前もって言い訳しておくべきだった、と思ったけれど、もう遅いか!
朗読の松岡励子先生が、天国で「なんだよう!」と憤慨していらっしゃるに違いない。優等生だったのにね。

 久しぶりに開いた海潮音だったけれど、懐かしい詩が一杯。学生時代から2冊目だが、どちらもヨレヨレだ。
 昨年、部屋が積み上げた本で一杯になってしまったので、ベッドを処分して、体の大きさにあった木箱を作ってもらってその上に寝ている。○○桶のようだという人もいるが、お陰で寝台の周りを歩けるようになった。その特性寝台を作ってもらったときに、ついでに文庫本が100冊ずつ、2段に入る本棚を枕元に乗っけてもらって、その中に「座右の書」を詰め込んでいる。
 海潮音もその中にあるが、その多くが詩の本で、色々な国の、でも、残念ながら日本語ばかりだけれど、ロマンチックな系統がそろっている。

 来週は多分、東京からになるけれど、元気になれる、どんな本を選ぶのだろうか???


オバケちゃんとはしるおばあさん (オバケちゃんの本9)

(ASIN: 4061952897)
松谷 みよ子  
講談社 / 在庫あり。