『そら、にげろ』赤羽末吉 偕成社

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 2月20日のFM軽井沢は多分、赤羽末吉の『そら、にげろ』偕成社を紹介したと思う。全部で、2,3行しかことばがなくて、絵だけでストーリーが進んでゆく。こげ茶色の着物を尻っぱしょりした飛脚の着物から、海老茶色の雀が逃げ出してしまう。飛脚はその雀達を追いかけて、山を登ったり下ったり、雨が降ってくると、逃げている雀達が、紺の手ぬぐいでほおかぶりして飛んでいる。面白さにつられて、何回もページを繰りなおすと、そのたびに、何か楽しいことが見付かる。

 絵本ばかりではない。幼い頃から、同じ本を読み返す楽しみというのは、ゆったりと時が過ぎて心が和む。若い頃飢えを満たすようにしてむさぼり読んだ小説も、還暦を過ぎて読み返すとまるで違った味がする。食い逃げのように急いで読んだ本は、あちこち忘れている部分もあって、別の意味で面白いが、深々と読んだ文章でも、時がたって読み返すと、まるで違った色合いがある。恋する娘の目には、どんなことばも愛のささやきに思えるが、今考えると、まるで違った意味合いであったり、何をふざけているのだろうと思った若者のことばが、今考えると、案外真剣な愛のことばだったと思い当たったりする。何もかも諦めていたけれど、けっこう、愛と友情に恵まれた人生だったと、心が豊かになる。読み返す価値のある本、思い返す価値のある人生。

 3月2日にせせらぎ文庫にカリタさんのお雛様を飾る為に、時間をやりくりして軽井沢に来たのだが、夜にならない内に着いたのに、やはり家の建物自体が冷え切っていて、一度入ってしまうと外に出る気にならなくて、結局3月3日の朝早く行って、流し雛と一緒に飾ってきた。
 折紙でも、あれくらいの雛人形なら、充分段飾りになる。カリタさんのお陰で、良いひな祭りだった。

 今日のせせらぎ文庫は、お雛様をしまって、流し雛は回収。明日にでも、どこかの神社に納めたい。
英語のポップアップ絵本を、開いたままで棚に飾ってみた。背表紙だけ見ても、英語の読めない子はポップアップだとは分からないだろうから。誰か、貸出ノートに名前が書いてあって、ちゃんと借りてくれた人がいて、嬉しい日だった。せせらぎ文庫もだんだん文庫。だんだんに文庫らしくなってゆくのだろう。私の大切な仕事は、なるべく毎週、とにかく文庫を開くこと。