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2016年11月

2016年11月 7日

『十二単衣をきた悪魔』内館牧子 幻冬舎

 6日(日曜)11時10分頃からのFM軽井沢「魔法使いの本棚」で紹介した本だが、限られた時間の中では、なかなか思うことは全部話せない。いつも、本当はもう少し深いんだけど・・・と思いながら、適当なところで、えーとお.おススメです、なんぞと終わってしまう。まあ、作者が何日もかけて書いたものを数時間で読んでしまうのだから、10分くらいにまとめて話せるものなのかな???

 久しぶりに「せせらぎブログに書かなきゃ!」と思ったのは、勿論面白かったからだが、とびとびに読んでいた源氏物語が、久しぶりに、ひとつの物語につながったような気がしたから。

 私が初めて『源氏物語』を通しで読んだのは中学生のころ。もちろん?古文ではなくて、谷崎の現代語訳、いわゆる『谷崎源氏』が全11巻、揃っているのを見つけたからだ。今の人達には谷崎文学も古典に入るのかもしれないけれど、明治文学は、今の日本語をちゃんと話している人なら、自然に読めてしまう・・・はず。それなのにどうして、彼らは難しく感じるのだろう。また、話が横道にそれてしまいそう。

 主人公の「雷=ライ」は50社を受けて内定を貰えないダメ人間。外見も、性格も、実力も人並み以下、従って女の子にもてない、という設定であるらしい。ところが弟の「水=スイ」はハンサムで、よく出来て、性格も優しい。仲の良い兄弟だが、雷は常に弟にコンプレックスを抱いている。

 この雷が、派遣の仕事で製薬会社主催の『源氏物語』のイベント会場の設営に雇われ、帰りに来館者用のパンフレットと、源氏物語のあらすじ、登場人物に相応しい売薬、などのはいったビニール袋を貰う。家の灯が見えたころ、家では弟の水が京都大学に入ったお祝いをしていると聞き、家族が雷を気遣って、弟の志望大学さえ知らせずにいたと気付く。帰り道にいつの間にか枝道が現れ、雷はその道に踏み込み『源氏物語』の世界に入り込んでしまう。

 連れていかれたところが、自分が派遣で設営させられた弘徽殿にそっくり。そこで弘徽殿の女御と一宮に「陰陽師」として仕えることになり、ビニール袋の薬が役に立ち、周囲から認められる。大人しくて控えめな一宮に、腹違いの桐壺の局に光源氏という輝かしい弟がいるのを、わが身に引き比べて同情し、一宮母子の味方になる。20数年後に現実の世界に戻るが、浦島太郎と反対に、派遣仕事の帰り道に戻り、時間は少しもずれていない。しかし20年間を過ごした源氏の世界は身についていて、大学院に入って古典を極めようという結末が嬉しい。

 源氏を読んでいない人に『源氏物語』を読んでみたいと思わせるだろうが、そっちは、『あさきゆめみし』からでも、読んでもらえばいいし、源氏を斜め読みしかしていない大部分の人達に、ちょっと読み返して確かめたい、フーン、ほんとにそう書いてあったっけ?と思わせる本である。文庫本、定価770円也。

2016年11月20日

『茶経』陸羽著 講談社教養文庫

 訳と解説は「布目チョウフウ」。潮という字とフウはさんずいに風。残念ながらこのWindowsでは出てこない字で、漢字の作り方はわからないので、カタカナで我慢してください。なぜ最初から解説者か、というと、沢山出版されている『茶経』の中で、この布目氏の解説が、私には一番良くわかるし、この一冊は読む人の興味に応じて、2重3重に色々な読み方ができるように工夫されている。

 まず『茶経』そのものが一文ずつ書かれ、「訳文」が逐語訳で並べられ、次に「語釈」として、一つ一つの単語の意味と来歴が、丁寧に述べられている。
例えば、最初の行は「茶経上の巻、キョウ陵の陸羽撰す」とあるが、語釈では「キョウ陵は群名、県名」とあって、その場所の説明。「撰」については「書物を著作すること」とある。この説明がないと、私のような慌者は、「ああ、陸羽が選んだのね、つまり監修ってこと?」等と、勝手に思い込んでしまう。この語釈のお陰で、漢文といっても漢詩を返り点付きでも読めるかどうか、といった程度の私でも、少なくとも誤解せずに、読み進むことができる。
 
 「語釈」の後には「校異」とあって、更に細かい、そのことばの来歴などまで説明されているが、私の場合・・・・読み飛ばした。「語釈」の中には植物の名前も多く、それには一つずつ、図鑑の様な絵と写真があり、更にその図にも、出典などの細かい由来が書かれている。

 と、11月16日の茶英会の「Book of Tea」の発表の参考書として使って以来、少しずつまじめに読み返してみると、なるほど、やはりこの本はお茶のバイブルと呼ばれる価値がある。但し『茶経』そのものではなく、布目氏の訳と解釈があってのことである。20日はFM軽井沢で怖れ多くもこの『茶経』を紹介し、帰りにせせらぎ文庫に行ったので、心底くたびれた。一応ここまでで公開して、少しずつ書き加えてゆこうと思う。とても一度には書ききれないから。・・・とここまで28日に更新。


茶経 全訳注 (講談社学術文庫)

(ASIN: 4062921359)
布目 潮フウ  
講談社 / 在庫あり。