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2017年3月

2017年3月 1日

『「独りバー」はこわくない』中央新書ラクレ

 副題に「カウンター初心者用バイブル」とある。たしかに、この本を持っていると、どんなバーでも、臆することなくカウンターに座って、バーテンダーとことばを交わそうが交わすまいが、楽しいひと時を過ごせるに違いない。

 でも、忘れないうちに書いておくけど、女性の「独りバー」は基本的に薦めない。特に外国では、みっともないし、危険でもある。女の子は成人する前に、必ず自分の酒量を知っておくこと。家庭で健全に、ビールなら何杯、日本酒なら何合、ウィスキーなら・・・と、色々なお酒の自分のリミットを知っておくこと。未成年の飲酒は法律で禁じられているが、これは飲酒ではなく、アルコール飲料の実験であり、成人になってからでは、断れない場合に危険なことになりかねないのだから。そして成人になったら、まず、家族とバーに行って、自分の酔い方を知っておいてほしい。ぼうっとなったり、眠くなったりする人は、親しくない人とは飲みに行かないこと。

 とはいえ、バーに行っても飲まなければよいわけで、一杯のカクテルで、何時間くらい酔っぱらいの相手ができるか、もちろん自分が楽しみながら、という技術、つまり話術を身に着けるには、この本はとても役に立つ。

 先ず、基本的なお酒の銘柄が22種類、的確の説明されている。例えばスコッチならカティサーク、ジョニーウォーカー、オールドパー、グラウス、ワールドターキー、山崎等。スピリッツなら、ビーフイーター、モルガン、スミノフ等。それぞれに名前の由来や様々なエピソード、カティサークは紅茶を運んでいた美しい帆船である、とか、ラム酒は海賊の好んだお酒。モルガンは海賊キャプテン・モルガンの名前である、と聞くと、どれもこれも、飲んでみたくなるし、もちろん洒落た飲み方等々の話題が添えられている。

 コラム欄もあり、日本で初めてハイボールを飲んだ女性は、唐人お吉である、とか、酒の肴とかつまみ、があるのは日本だけ等々。文学や絵画とのかかわりもあり、どのページを開いても一区切りが短くて、電車の中で読むのに最適。スマホをのぞき込んでいるより、本を読んでいる方がずっとかっこいい。ポケットに入れておいて、繰り返して読みたくなる本である。

2017年3月23日

『ずーっと ずっと だいすきだよ』評論社

 これは、3月19日、FM軽井沢で紹介した絵本。初版が販売された頃、すぐに読んだし、手元にもあったのだが、多分、これまでに紹介はしていない。一つには、同じ評論社の『どんなに きみがすきだか あててごらん』がとても好きで、そっちを紹介してしまうので、こちらを紹介し難かったということもある。

 ストーリーは、犬好きの人なら、一度や二度は誰でも経験していることで、可愛がっている犬が年を取り、飼主は死期が近いのを知りつつ、より心を込めて世話をするが、逝ってしまう。
多くの本は、この辺りで終わるのだが、この本には続きがあって、主人公は、周りの人達とボクは違う、だって「ずっとずっと大好きだよ」と毎日ことばで伝えていたから、きっと愛犬もわかってくれただろう、と自分で自分を慰めるのである。

 絵本に何か「教え」を求めるなら、この本は「ことばに出して、心を伝えましょう」ということなのだろうが、私は、この本を読むたびに、もっと違うことを考えてしまう。

 相手の死が近いということを知っていて、それを知っているということも知られていて、その人の病床を見舞うとき、何といって慰めればよいのだろう、ということである。

 私が22,3歳の頃、親友が2人続けて亡くなった。1人目はお洒落だったから、痩せすぎた自分の姿を誰にも見せたくいないと、1年余り、誰も見舞うことはできなかった。亡くなる何週間か前に電話があって、美味しい店があるから直ったら喰いに行こう、貯金しとけよ、といわれたので、きっとスグ良くなる、と思っていた。亡くなった時、枕元に私の宛名を書いた白い封筒が置いてあったという。

 そんな思いをして半年たったころ、私のマネージャーを買って出てくれて毎週会っていた2人目の親友が入院した。実は中学のころから病身で、医者に迫って自分の寿命を訊き、覚悟していた。だからやりたいことを全部やっておくんだと、積極的に生きていた。もうとっくに宣告された寿命を過ぎ、検査値はあり得ないと医者を驚かせるほど、悪くなっていた。見舞いたいと思っても、かける言葉が思いつかない。何度か病院の前まで行って、そのまま帰ってきた。もう会えなくなると言われて見舞うと、「ちっとも来ないじゃないか」といわれ「忙しいのよ」と返事して「今度はちゃんと時間つくって来るわ」と約束して、それきりになった。

 お互いに死期を知っていて交わすことばを覚えたのは、母が癌だと宣告された時だった。その頃はまだ癌は本人には知らせなかったから、母が家族よりも先に知っていたのは、カルテの英語だかドイツ語だかが分かってしまったからだった。「慰められるのが嫌だから、私が知っていることを誰にも言わないで」と母は言った。だから私も慰めなかった。
唯、1日に1回必ず母を笑わせよう、と決心した。ゲラゲラ笑わなくてもいいから、心の中で、にっこりするような話をしよう!兄が私を母に会わせないようにしたので、私は毎日電話をかけて、その日あったことの中から、母を喜ばせるような話をした。母が亡くなっても何年かは、あ、今日はこの話をしよう、と、楽しい話を心でおさらいする癖が消えなかった。

 というわけで、この本の教訓とは、思いが少しずれてしまう。
この主人公は、ことばをかけることで他の家族と(犬への愛情の)差をつけるのだが、誰よりも君が好きだよとことばで言わなくても、黙ってそばに居るだけで、気持は犬に伝わったに違いない。でも、それでは「この絵本はこう言っているのです」なんて言い方はしないにしても、こういうストーリーです、というときに、一瞬つまってしまう。

・・・で、なかなか紹介できなかったけれど、子どもにとっては、大好きな犬が死んじゃうこともあるんだ、と死に向き合うだけで、充分な体験で、実際にそんな悲しい体験をする前に、耐性をつけておくところに、読書の大切さがある。それに作者であるハンス・ウィルヘルムは絵も描いているのだが、暖かく、優しい筆で、年を取って太りだした犬の、膨らんだお腹がすごく可愛い。理屈を言っていないで、子どもを膝にのせて読んでやりたい本。


ずーっと ずっと だいすきだよ (児童図書館・絵本の部屋)

(ASIN: 4566002764)
ハンス ウィルヘルム  
評論社 / 在庫あり。