『「独りバー」はこわくない』中央新書ラクレ

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 副題に「カウンター初心者用バイブル」とある。たしかに、この本を持っていると、どんなバーでも、臆することなくカウンターに座って、バーテンダーとことばを交わそうが交わすまいが、楽しいひと時を過ごせるに違いない。

 でも、忘れないうちに書いておくけど、女性の「独りバー」は基本的に薦めない。特に外国では、みっともないし、危険でもある。女の子は成人する前に、必ず自分の酒量を知っておくこと。家庭で健全に、ビールなら何杯、日本酒なら何合、ウィスキーなら・・・と、色々なお酒の自分のリミットを知っておくこと。未成年の飲酒は法律で禁じられているが、これは飲酒ではなく、アルコール飲料の実験であり、成人になってからでは、断れない場合に危険なことになりかねないのだから。そして成人になったら、まず、家族とバーに行って、自分の酔い方を知っておいてほしい。ぼうっとなったり、眠くなったりする人は、親しくない人とは飲みに行かないこと。

 とはいえ、バーに行っても飲まなければよいわけで、一杯のカクテルで、何時間くらい酔っぱらいの相手ができるか、もちろん自分が楽しみながら、という技術、つまり話術を身に着けるには、この本はとても役に立つ。

 先ず、基本的なお酒の銘柄が22種類、的確の説明されている。例えばスコッチならカティサーク、ジョニーウォーカー、オールドパー、グラウス、ワールドターキー、山崎等。スピリッツなら、ビーフイーター、モルガン、スミノフ等。それぞれに名前の由来や様々なエピソード、カティサークは紅茶を運んでいた美しい帆船である、とか、ラム酒は海賊の好んだお酒。モルガンは海賊キャプテン・モルガンの名前である、と聞くと、どれもこれも、飲んでみたくなるし、もちろん洒落た飲み方等々の話題が添えられている。

 コラム欄もあり、日本で初めてハイボールを飲んだ女性は、唐人お吉である、とか、酒の肴とかつまみ、があるのは日本だけ等々。文学や絵画とのかかわりもあり、どのページを開いても一区切りが短くて、電車の中で読むのに最適。スマホをのぞき込んでいるより、本を読んでいる方がずっとかっこいい。ポケットに入れておいて、繰り返して読みたくなる本である。