茶の本(英文収録) 岡倉天心 著 桶谷秀昭 訳 講談社 刊

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本来英語で書かれた本なのだから、英文収録、というのもなんだかおかしいが、
講談社から学術文庫として、薄手の文庫本に、日英両文が含まれているので、
バッグに入れて持ち歩いて読めるのが嬉しい。

「茶英会」という裏千家のグループで、もう何十年もこの一冊を繰り返し読んで
勉強しているのだが、何回読んでも、岡倉天心の英語は私にはひどく難解である。
それでも、毎月一回、担当した人が音読して和訳し、出てくる色々な事柄を調べて
発表してくれるので、少しずつ、本当に少しずつだが、この難しい本が分かり始めている。

勉強会の最中に、そっと桶谷さんの訳のページを繰ってカンニングているが、必ずしも
解釈が発表者と同じでない所が面白い。発表者は若いので、文章は彼女たちの訳の方が
分かりやすいような気がする。

岡倉天心は、茶道を、世界に誇る日本の文化として紹介したかったようで、ときおり
西洋文化が、ケチョンケチョンにけなされていたりもするが、日本の歴史の移り変わりが、
決して芸術と無関係ではいられなかった時代を、正確な英語で描いているのが貴重である。

せせらぎ文庫では文庫本の棚に、肩身が狭そうに並んでいるが、文庫に来る人たちが、
ボロボロになるまで読み込んでくれたら、もうすこし大きな版を買いたい。