『いじわる』せなけいこ作 すずき出版

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 FM軽井沢でこの本を紹介したのは昨年の12月だったのだが、ブログに書くのは、どうも遅くなってしまう。
 
 瀬名さんの作品は次々と出版されていて、多作な絵本作家といえるのだが、不思議なことに!どの作品も新しい。絵本であれ読物であれ、沢山書かれていると、始めからシリーズになっているのは別としても、どうしても同じような傾向、好みがでてくるものだが、せなけいこの作品にはそれがない。
 
 どの一冊も新しく、ウサギのシリーズも、お化けのシリーズも、シリーズになっていてさえ、一冊ごとにまるで違った楽しさがある。それでいて、せなけいこの世界というものは確立されていて、せなけいこの絵本を読み始めた子どもは、知らず知らずに、次々とせなけいこの絵本を手に取るようになる。この作家の頭の中には、いつも、いくつもの楽しい物語が渦巻いているに違いない。

 つまり彼女の作品は、うんうん唸って作り上げた作品ではなく、頭の中にあるのを一つ引っ張り出して、切り絵に仕上げているだけに過ぎないのだ。きっと。

 『いじわる』も、なんとなく『太陽と北風』のようなお話を想像したのだが、まるで違っていた。
 まず、たあぼうが、せっかく作った雪だるまをお日様が溶かすに違いないと思い込んで、お日様に「あっちいけ!」と意地悪な心を持ったことから始まる。するとお日様も意地悪になって、雪だるまを溶かしてしまう。たあぼうが怒って投げたタドンが白雲に当たって黒雲に変わり意地悪をして雨を降らせ、たあぼうは雨から逃げて駆け込んだ洞穴で、恐竜の尻尾を踏んでしまう。さあ大変・・・

 意地悪な心を持つと、こんなに大変なことになるよ、という絵本なのだが、意地悪を捨てて、最後のページでにっこり笑ったたあぼうには、これから良いことばかりが降りかかってくるに違いない。

 日々、いろいろ悩ませられる大人になるまでに、子ども達に、心の切替えの術を身に付けてほしいものだ。