『虹伝説』ウル・デ・リコ作 小学館

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 短い月だから「2月は逃げる」というが、ひとつも書かない内に3月になってしまった。昨日は、雪の軽井沢で、ひとりでひなまつり、と思っていたら、思いがけなく、荒木夫妻からお誘いの電話がかかり、せせらぎ文庫立ち上げから、全てお世話になっている荒木武貴氏の退院を祝って、3人で「ながくら」で夕食。
日本酒をほんの一杯、のつもりが2杯。でも、なぜか少しも酔えなかった。お酒は「一の越州」だったのだけれど、なんだか薄い。軽井沢では飲み慣れたお酒だから、薄かったわけではなくて、実は2月27日の朝、友人が亡くなったショックが消えなかったからだろう。

 そういう時だから、美しい本が見たくて、3月1日のFM軽井沢では、ウルデリコの『虹伝説』を紹介した。色が綺麗だ色が綺麗だ、と言っても、ラジオだから、聞いている人はわからない。虹だから、7色が美しいのは分かるだろうけれど、ウルデリコの絵は、虹の小人が棲んでいる、あるいは、虹を探して回る森や谷の景色が美しい。中でも、虹の出る前夜、花達が虹盗人の小人たちと戦う前夜の、森のなかの湖と、それを照らす月の、影絵のようないページが素晴らしい。
 で、そのページと、絵の具のチューブから絞り出したような、赤とか黄色の色模様?の見返しと、表紙の3枚の写真をフェイスブックにアップしてみた。

 この絵本の価値は、確かに彼の絵の美しさなのだろうが、実はこの物語のほうが、より多くファンの心を惹きつける。原題のRainbou Goblin は、日本語に直訳すると、虹の小人、で可愛らしくなってしまうが、それを「虹伝説」と訳しているところが、訳者の優れた翻訳力である。描かれたゴブリン達は、無様な粘土細工のような顔をして、頭の先から足の先まで、虹の一色に染まっている。虹の七色の名前がついていて、自分の名前の色を食べてしまうので、ゴブリンが食べ尽くした後は、虹が出なくなってしまう。
そこで、その谷中の花が協力して、花の色の中に虹を隠して、ゴブリンをやっつける。

 虹の橋をわたって幸せになる・・・ような物語が多い中で、絵が美しいのに、ストーリーが恐ろしくて、なんとなく、こわごわ読んでしまう。子どもにも面白いのだろうが、大人にとって、とても面白い絵本。出版された当時は、世界中で話題になった。

 この次は、1,2週間以内に、・・・なんて、約束しないほうがいいかしら。ね?