『マラコット深海』コナン・ドイル作 創元推理文庫

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 ストレスが溜まって疲れきって、気分転換に本が読みたいけれど、読み切る体力がない・・・そんな時、こういう薄っぺらい文庫本。しかも、コナン・ドイル!カバーの絵も、何やら古い海賊船用、みたいな海図に、冷たげな、長い髪の女の横顔。貴女の読みたい本はこれでしょ?・・・みたいな?

 さあっと斜め読みで、小一時間で読み切るつもりが、ついじっくりと、読み込んでしまった。ストーリーよりも、ディテイルが面白い。
小一時間でははじめから無理。薄いと言っても180ページちょっきりあるから、2、3時間かかる。
それに、本自体が古くて、ページがセピア色に変色して読みにくい。私の保管の仕方が悪かったのだろうけれど。1971年版。44年前に印刷された本。110円也。

 老マラコット博士が深海艇に乗り、海底都市にたどり着く。アトランティスのようなその古い都市には、人類が暮らしていた。というストーリー。と言ってしまっては、あまりに乱暴なあらすじだが、サイアラス・ヘッドリーという主人公の動物学者と、機械工のスキャンランと博士の3人が3様に状況を把握し、ヘッドリーが読者に語る、という形態で、深海に降りていく様子、古い都市の生活、などが詳細に描かれている。

 ひとつひとつの状況が、細かく描かれているので、読んでいると、頭の中に次々と、その場面が浮かんでくる。あれっ、もしかして、これは映画でも見たのかしら、と思うほど、バーチャルな画像で3人の個性がはっきりと描き分けられ、どの俳優にも似ていないところを見ると、きっと私の頭のなかで生まれたのだろうけど、読んでいるのか観ているのか分からないほど鮮やかに、その場面が浮かんでくる。

 半世紀以上前、1963年に初版が出ているから、訳の文章も古いので、ちょっと訳し直してみたい一冊。