『ゆきのひの おくりもの』ポールフランソワ文 鈴木出版

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 絵はゲルダ・ミューラー。私が今手にしているのは、鈴木出版から17年10月に出たばかりの版だが、図書館などで探すとパウロ舎のものが殆どである。長年読み継がれている名作で、この本を手にしたとたんに、新作であるはずがない、昔読んだことがあると、ウェブで調べてしまった。

 ストーリーは:雪の日に食べ物を探しに出た小兎が、大きな人参を2本見つけ、1本でお腹いっぱいになったので、残りの1本を、雪の日にお腹を空かせているに違いない親友の小馬に届けに行く。ところが小馬は自分で雪の中で蕪を見つけてお腹いっぱい食べて帰宅、小兎の置いて行った人参を見つける。戸の外には小兎の足跡。小兎の友情に感謝しながら、自分はお腹がいっぱいなので、お腹を空かせているに違いない羊に、人参を届けに行く。どの友達も自分の餌は雪の中でちゃんと確保していて、留守に友達の届けてくれた人参と雪の中の足跡に感謝して、最後に小鹿が羊の届けた人参を、ぐっすり眠っている小兎の枕元に置いてくる。

 雪に残る動物の足跡は嬉しい。私は雪が降ると入口にチェーンを張ってしまう。郵便屋さんやクロネコさんに申し訳ないとは思うのだが、通路の真ん中を通ってほしくない。丁度チリトリの幅に雪を掻いた、狭っ苦しい通路を通って下さい、と書いた紙をチェーンにぶら下げる。
 隣の隣に違法建築が建ってから、この辺の小動物が少なくなった。リスもキジも、巣を壊されたようだ。まだいくつかの家族は残っているが、各々縄張りを変えたらしい。兎の巣は無くなってしまったようだから、生ごみの穴に、大きめの人参のしっぽを捨てても、持っていく動物が・・・あ、イノシシが食べているかもしれないが、あまり度々はやってこない。

 絵本の話に戻るが、私は、どの動物も、自分で餌を見つけていること、自分のお腹がいっぱいになっていて、友達に人参を分けてあげるところ、が、案外、このお話が、子どもに安心感を与えているのではないかと思う。
自分もお腹が空いているのに友達に分けてあげるお話も、大切なストーリーだと思うし、そういうお話も好きだけれど、そういう道徳的な?「良いお話」ばかり聞かされていると、子どもは、何か良いことをしなければ、と、ストレスが溜まっていくのではないかと気になる。

 特にこの頃のように、読み聞かせが盛んになり、大人に「選ばれた」良いお話ばかり聞かされているから、今、バカみたいにブームになっている意味なく子どもを笑わせる絵本、「ぶーぶー」「ぶりぶり」等という音声だけを文字で並べて読ませるようなバカな本が子どもを喜ばせるようになる。
そして、そうなると、親がその本を我先に買って子どもを笑わせた良い親だと自己満足しているのが、見ていてつらい。