『となりのゴッペ』山中恒 作 偕成社

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 1974年の作品だから、ずいぶん古いのだけれど、この頃、こういう読んでいて楽しい本が少なくなったような気がして、紹介したくなった。FM軽井沢でも、多分⒑年くらい前に紹介したのだが、なぜか近頃、いつの間にか机の上に出てきている。すごく不思議な現象なのだけれど、断じて私自身が書棚から持ち出したわけではないし、FM軽井沢でも『海外子女教育』誌でも、ずーと取り上げてないのだから、2階から階下まで、この本はひとりで降りてきたに相違ない。そんなに寂しかったのかなあ。

 とにかく、このゴッペというのは、水沢研の挿絵に寄れば、ぼさぼさ頭に猫みたいな口ひげがあるおかしな奴だが、好意が持てる。ゴッペという呼名の由来は、鼬の最後っ屁、だそうだから、そういう奴なのだ。
 小学3年生のアキコは、新学期、どうも学校に行きたくない。心配したパパに、もしかするとパパのいたずら書きが残っているかもしれないぞ、と言われて、興味津々になって、学校に行くようになる。イタチみたいな顔の悪戯描きに触れてみると、絵がニヤッと笑ったようだ。それからというもの、何かというと、ゴッペが現れる。
 評論家なら、ここできっと、登校拒否の子どもへの親の愛情がどうのこうのと言うのかもしれないが、この山中恒の作品は、私が読んだ限りでは、そんな理屈っぽいことは少しも感じさせずに、子どもの心の問題を、片っ端から片付けてくれている。子どもから見た、気に入らない大人のあれこれをあげつらいながら、どこかで必ず、でもね、親たちはこんなに君たちを愛しているのだよ、と読者を安心させてくれる。

 山中恒のあと、こういうタイプの作家が、皆絵本の方に行ってしまったようで、子どもの読書力の低下に合わせたのかもしれないが、数少ない読める子の方が、こういう悩みを持っているに違いないので、もう少しこの年齢、この精神年齢の子どものための読物がほしい。
何だか今日は、真面目な気分。らしくないかも・・・・・。