『はんぶんちょうだい1・2・3』七尾純作 村上豊絵

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 我が家にとっては、幻の愛読書なのだが、半世紀近い昔、子ども達のお気に入りで、表紙もとれ、ボロボロになって、彼らが絵本を卒業する頃、いつの間にか姿を消した。といっても子ども達の所為ではない。私自身も気に入っていて、出たばかりのカラーコピー機を、試してみないか、と言われた時に、すぐ思い出して、一冊分コピーした後になくなったのだから、私が仕舞いなくしたに相違ない。と、こだわりたくなるほど村上豊の絵が心に残っている。もう一冊買えばいいと言われそうだが、コピーしたころには既に絶版になっていた。なんとか再販してほしい一冊である。多分、理科の先生あたりからクレームがついたかな、と思わなくもないが、絵ばかりではなく、テーマも良かったのでもったいない。

 この幻の本を、昨日のFM軽井沢で紹介した。唯一、私の語れるお話だったのだが、放送するのに間違えてはいけないとメモを取っていったものだから、宮尾さんに「語り風に、ご紹介いただきました」と言われて、多少傷ついた。その上、一番大切な2行を飛ばしたような気がしてならない。何のためにメモしていったんだ!と後悔しきり。

 ストーリーは、村上豊描く夕焼け空で、大男がパンを焼くシーンから始まり、大男がアグンとひとくち食べたカケラが晩秋の地上に落ちて、冬ごもりをするクマたちのお腹を満たした、というもの。クマのこぼしたカケラが子ネズミの、子ネズミのこぼしたカケラがコオロギの、コオロギのこぼしたカケラがアリたちの、冬ごもりの準備になって、「みんなみんな穴の中で、春が来るまで、おやすみなさーい」でおしまい。お腹が一杯になって、深い雪の中でゆっくり眠りに入る、という、枕元の読み聞かせに、最適な一冊でした。