『ホームズまるわかり事典』平賀三郎編著 青弓社

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 昨年の夏、図書館友の会の会合が軽井沢某所で開かれた。コロナ禍の中、レストランの中ではいけないかと、エントランスの庭園部分にテーブルと椅子を散在させての軽食で、文字通り三三五五の集まりだったが、偶然にも平賀さんと同じテーブルになり、平賀源内との関りから始まって、シャーロック・ホームズのお話を、ゆっくり伺うことができた。その時頂いたのが、この一冊。

 物語ではないから、一気に読めるはずもなく、だからと言って興味深いので、手元に置いて、気の向いた時に気の向いた章からパラパラと、色々な栞をはさみながら読んでいたら、いつの間にか半年が過ぎて、読むページがなくなってしまった。全部読んでも、繰り返し開いてみたくなるので、昨日の日曜日、FM軽井沢で紹介して、これでひとまず2階の本棚にしまいこみたいと思う。

 ホームズの事件簿に関わるあれこれが、101項目にわたって書かれているのだが、ホームズファンでなくても面白く読める。特にロンドンの街についての項目が多く、なつかしいあれこれが沢山出てくる。ローストビーフで有名なレストラン・シンプソン、『マイフェア・レディ』との関り、スコットランド・ヤード・・・。私がロンドンにいた頃は、と考えてみたら、もう半世紀も昔の事なのだが、その頃はまだ、スコットランドヤードの真向かいに、コベントガーデン劇場があって、オペラがはねて外に出ると、びっしり埋まったお迎えの車とタクシーを、お巡りさんが沢山出てきて交通整理をしてくれていた。イライザが花を売っていたコヴェントガーデン市場が、まだそのまま残っていたから、着物を着て、ちょっと気取ってタクシーを止めて「コヴェントガーデン迄!」というと「ジャガイモを買いに行くのかい?」とドライバーがお決まりのジョークを返してくれた。

 帰国してからも、JBBYのコングレスがある度に、帰りには必ずイギリスに寄ったので、コベントガーデン市場が、スマートなアーケードに纏められてしまったのが、ちょっと寂しかった。あまり変わらない街ロンドンも、やはり少しずつ変わって、だんだん見覚えのない街になってしまうのかもしれない。私の好きだったウォーレスコレクション美術館についてまで書かれているので、お気に入りのロンドン案内にもなる。昨日のFM軽井沢では、ホームズの部屋が残っているベーカー街には、日本貿易振興会のオフィスがあることを紹介しておいた。小学生のころ、緑色のカバーのかかった全集で読み始めたホームズの事件簿に、70年もたった今、また出会えたわけである。