佐々木マキは、本が出始めた頃から気に入っていたのだが、なぜか女性だと思い込んだ。佐野洋子に似た、ピリッとワサビの効いた絵が大好きで、ほっそりして、足の長い、スタイルの良い女性を頭に描きながら読んでいた。ところが何かの番組で、ほっそりしたオジサンであることを知って、なあんだ、そうだったのかと、それもまた、なぜか納得してしまった。知人も、えッ、男の人なのォ、と言っていたから、マキという名前の所為もあるだろうが、鋭い女性の感性が感じられる絵なのだと思う。
で、この『へろへろおじさん』も、表紙の、歩いているオジサンの足元に、青い小鳥が何やら考えながら歩いている絵を見ただけで、既に私の佐々木マキだなあ、と思えてしまう。
とにかくこのオジサン、いえ、佐々木マキではなくて「へろへろおじさん」ですが、運が悪いというか、間が悪いというか、たかがポストに手紙を入れに出かけただけなのに、階段で滑り落ちるは、頭の上から汚れたマットが落ちて来るは、ちょっとショウウィンドウを覗いている隙に足に犬の引綱を巻かれて道を引摺り回され、帽子は車に轢かれ、最後はとうとう、豚追い祭りの豚の群れの下敷きになっても、健気にもよろよろと立ち上がり、ポストに手紙を投函した次第。ところが一仕事済んだとアイスクリームを買うと、木陰のベンチに行く途中でぽたりとアイスクリームが地面に落ちるというおまけつき。ここでオジサンの気力もついにポキリと折れて、ベンチに座って泣き出してしまうが・・・。最後に天使の救いがあるのであります。
やっぱり、佐々木マキって良いなあ。