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2010年3月

2010年3月 6日

数学教育学会1「数の絵本リスト」

 数学教育学会のパワーポイントで表示する「お薦めする数の絵本リスト」プラスアルファー。


  1. 『はんぶんちょうだい1,2,3』 は、絶版でもあり、古い本なので入手できないが頭の中に残っているお話だけを、当日「語り」で紹介したい。数学の先生たちが「語り」というものに興味を持って下されば嬉しい。

  2. 『数 いまとむかし』 アービング・アドラー&ルース・アドラー作 福音館書店刊
    (黒田孝郎、大矢真一両氏の協力による。 絶版ではあるが、中味が濃く、子ども達をあきさせない。 目次がないのが残念だが、・数え方 ・数の表し方 ・分数 ・数の形(素数) ・正方形数 ・偶数 ・魔方陣 ・掛算 ・数の手品 と、思いがけないほうへ話が広がってゆく。大人が読んでも、充分学べる本。ぜひ復刊してほしい本である。

  3. 『ウラパン・オコサ』 谷川晃一作 童心社刊 この本は月刊『海外子女教育』誌「子どもの本棚」で、2回紹介している。数を1と2に分けて、1をウラパン、2をオコサと読んで、どんな数もウラパンとオコサの回数で表す。2.の『数 いまとむかし』にも出ているエネアとペチュバルで表した、昔の数え方からヒントを得て作った絵本だと思うが、単純な猿の絵が、ウラパンオコサという語調にも合っていて、子どもにとって親しみやすい。

  4. 『円の兄弟』 黒田孝郎著 大日本図書刊 楕円の話から円に導き、抽象的な概念を数式で表す。第2章では正方形から三角形へ、そして図形を数式で表すことを学ぶ。話は論語に及び、数学から論理学へと話が発展してゆく。内容は高度だが、中学二年程度の数式、定理しか用いず、しかも説明文が平易なので、小学校高学年でも理解できる。

  5. 『10人のゆかいなひっこし』、『ふしぎなたね』、『3びきのこぶた』、『あかいぼうし』、『数学博物誌』森毅 野崎章弘 安野光雅作 童話屋刊

  6. 『ちいさな1』 アン・ランド&ポール・ランド作 谷川俊太郎訳 ほるぷ出版

  7. 『はじめてのたしざん』、『はじめてのひきざん』、『数のたんけん』まついのりこ作 松井幹夫協力 偕成社刊

  8. 『ふしぎの国のアリスの算数パズル』 山崎直美著 さえら書房刊

  9. 『シャーロックホームズの算数パズル』 山崎直美著 さえら書房刊

  10. 『さーかす1,2,3』 あかね書房刊

  11. 『まる、さんかく、しかくさん』 やまもともりひさ文 むらかみつとむ絵 あかね書房刊

  12. 『博士の愛した数式』 小川洋子著 新潮社 数学が如何にロマンにあふれた学問かを語っている。

  13. 『かずとことばのえほん』シリーズ1~5 横地清著 岩崎書店(絶版)

2010年3月15日

数学教育学会 2 「バイリンガルと子どものアイデンティティ」

 英国滞在中から気になっていたのは、日本語の10進法の数詞と英語の12進法の数詞の違いで、幸い、自分の子どもたちは日本語で数えていたのだが、帰国して国際児童文庫の活動を始めるにあたって、個人的に、それがとても気になっていた。世界初の英語文庫「だんだん文庫」に、開設時、英語の数の絵本が一冊もなかったのは、私の独断と偏見である。

 だんだん文庫の入会資格は、「帰国児と多国籍の家庭の子ども、あるいは外国人の子どもなど、バイカルチュラルな環境で、1年以上育った子ども」に限られている。これは文庫本来の、「ことばを教えるのではなく、本来の言語能力を読書によってKeep upする」という趣旨に沿ったに過ぎないのだが、この方針を貫いていくのは、案外大変なことだった。

 「うちの子は英語教室で習わせているので、英語が喋れます」「アメリカンスクールに通わせています」といわれると困ってしまう。学校や英語教室で英語を習っているのと、異文化の中で生活しているのでは言語環境が違うということまで説明しなければならない。

 だんだん文庫では、英国式のボランティア、つまり、交通費などの必要経費も支払わず、ケーキを焼いてきてもらったり、文房具を寄付してもらったりという、余裕のある人でなければできないボランティアだったので、特に外国人スタッフは、お小遣い稼ぎに英会話を教える若い外国人ではなく、外交官夫人等、キチンとした英語を話す人ばかりで、しかも子どもたちの支払う会費は月額500円以内だったので当時の教育ママたちにとっては、垂涎の的だったのである。

 現在ではそのとき以上に幼児からの英語教育を望む親が多く、早くから始めれば外国人と同じように話せるようになると、幼稚園のカリキュラムにさえ、取り入れているところがある。
 発音と単語数が多ければ楽しい会話ができるというものではない。大切なのは内容である。母国語で自分の意思も伝えられないのに「バウワウ」を習って何になるのだろう。

 恐ろしいのは、バイリンガルだといわれている子どもの中に、アイデンティティを失っている子が多く、祖国という心のよりどころを探し続けている。例えば大学生で日本に戻って、恋人に思いを伝えようとしたときに、どちらのことばでも適切に伝えられず、ただ涙をこぼしていたという。

 ことばは人生のすべてをつかさどるといっても過言ではない。英語は学齢から始めても、十分に外国人と対抗できる。幼時から始めれば発音が良くなるからというが、発音は音楽感覚の問題で、クラシックを幼児からよく聞いていれば、すぐうまくなる。
子どもたちの一生の幸せを願うなら、まず親が正しい日本語を学ぶべきである。教育の原点は家庭教育なのだから。

 

2010年3月19日

数学教育学会のために。No3 3世代文庫とは。

 3世代文庫のアイディアは、1988年、ICBA10周年記念フォーラムがきっかけになった。フォーラムのテーマは「どうすれば子ども達を本の世界に取り戻せるか?」だった。フォーラムには、日本の教育界、児童文学界からはもちろん、イギリス、カナダ、オーストラリア、メキシコから、児童書専門の司書など、子どもの読書指導の専門家を集め、フロアにも、多くの外国人を含む百数十名が参加して、熱心な討論が続いた。

 そして出た結論は、TVに何かを申し入れようとか、もっと良い本が出版されればなどという、ありがちな上滑りな意見ではなく、至極当たり前な「大人がもっと本を読まなければ、子どもも本を読まない」であった。外国人妻の会から参加した女性の「夫は仕事ばかりで家に帰って来ない。いったいどうやって、子どもを育てれば良いのだ」という涙の訴えに、一同は心を打たれた。

 日本人、特に男性は社会人になると本を読まなくなる。特に家庭では本を読まない。女性も然り。子どもが出来ると、雑誌や実用書ばかりで、本を読まない。生活ばかりに追われて、読書によって自分の世界を広げる楽しさを忘れてしまう。大人が、子どもの前で本を読まないから、子どもは本を読む楽しさを知らずに育ってしまう。子どもを本の世界に取り戻したければ、大人がもっと本を読まなければ、というのが結論だった。
 フォーラムはそこで終わってしまったから、我々は「大人がもっと本を読もう!」というアピールを出して終わったわけだが、私の心の中には、それでは具体的に、どうすればよいのか、という疑問が残ってしまった。

 大人が家庭で本を読む、といっても、仕事から疲れて帰ってくる親たちが、子どもの前で本を読むだろうか?それでは休日に読むとして、子どもの前で、落着いて本が読めるだろうか?大人が夢中になって読まなければ、子どもが釣られて読むわけはない。
 かつて我家では、休日は家族揃って貸本屋に行って、両手にマンガを抱えて帰って、次の休日まで必死で何十冊ものマンガを読む、という作業を、数週間続けたことがある。子ども達にマンガを飽食させようという下心もあったのだが、親のほうも「近頃の漫画」に興味があったので、親子共に、結構楽しめる数週間であった。

 その頃のマンガには『のたり松太郎』など、親子で楽しめるマンガが沢山あったからでもあるが、親子が同じ本をやったりとったりして読むのは楽しい。特に感想を求めるわけでもなく、誰がどのマンガを借りてきたか確かめもせず、ひたすらに借りられるだけ借りてきて、むさぼり読んだ。

 それと同じ感覚の文庫はできないか? しかし、マンガというのは両刃の剣で、「本」というものに子どもを近づけるのに良い手段ではあるが、そのまままともな本に移らずに、マンガしか読まなくなってしまう可能性もある。そこで私は、せせらぎ文庫に本を選ぶに当たって、ターゲットを30から40台の父親に絞った。子どもの手を引いて来た父親が、おやっとつい手にとってしまうような本を並べた。その下の段には、30代の女性に面白そうな小説。隣の棚には、リタイヤーした祖父母が、ゆとりの人生でもう一度読んでみたくなる、学生めいた本も並べてみた。近頃、子どもの本は良いものがたくさんある。読ませたくない雑な編集の絵本さえ避ければ、子どもの本棚は、時間に従って充実してくる。

 軽井沢という町の特殊性から、目論見が当たったと思えるのは、まだ夏休みだけなのだが、夏になると、私が夢みたとおりの3世代の家族が、5,6人ずつの家族が、ぞろぞろと狭い文庫に入ってきて、各々好きな本を選び、大人は自分の分は借りる手続きをしておいて、孫や子どもにねだられるままに絵本を読み聞かせている。

 適度に狭い部屋に、祖父母と両親と、叔父、叔母や従弟達と膝小僧を並べて本を読む子ども達を見ると、とても豊かな気持になる。日本の未来も、捨てたものではない。これが世界初の3世代文庫、せせらぎ文庫である。

 蛇足ながら、毎年、海の日の連休には千が滝西区の公民館で「せせらぎ文庫フェスタ」が開催され、絵本作家の読み聞かせやお話のほか、面白理科実験、社会科体操、折紙、英語の絵本の読み聞かせまで、盛りだくさんな企画を、3世代で楽しめる。

2010年3月29日

『森の謝肉祭』 舟崎克彦文 野村直子絵 パロル舎刊

 3月22日は、『森の謝肉祭』の出版記念会だった。恵比寿の駅から徒歩5分ほどの、Malleという小じんまりしたギャラリーだったが、なぜか森の中の喫茶店のようなぬくもりがあって、作品の雰囲気に良くあっていた。美しい女性がいると思ったら、画家の野村さんだった。誰も紹介してくれなくても、壁に並んでいる作品を見ればすぐわかる。やがて舟崎先生が現れて、紹介してくださった。その会には当然のことながら?出版元のパロル舎の社長もみえていて、いろいろな話を伺うこともできた。有意義な一日。

 さて、この絵本は子どもにも楽しいが、大人にはさらに面白い。
森の家に引越してきたマリィちゃんのもとに、いろいろな動物たちがおとずれる、という筋なのだが、赤頭巾と狼、というか、不思議の国のアリスというか、一風変わった雰囲気がある絵本である。

 訪れてくる動物たちはネズミ、ウシガエル、ウサギ、ネコの面々だが、みんな食べてしまいたいほどかわいいマリィちゃんを一口食べてみたいと思っている。
 どのページも野村直子の精緻な筆づかいでこの世のものとは思えない美しい世界を描き出している。とりわけ「なんだか へんなヒトたちばっかりね・・・」の一言で始まるページのマリィちゃんが美しい。この絵が見たい方は購入していただく他はない。

 
 


森の謝肉祭

(ASIN: 4894190958)
舟崎 克彦  
パロル舎