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2016年8月

2016年8月 1日

『あたまにかきのき』唯野元弘作 鈴木出版

 「せせらぎ文庫フェスタ」の一日目に、この本を小林毅氏が読んだ。例年、読み手として参加している、お話ファゴットの杉山恵子さんが、都合で参加できないことが前々日に決まり、文庫フェスタから読み聞かせが消えては困るので、専門は演出家ではあるけれど演劇の研鑽を積んでいる毅氏に急遽依頼した。丁度ピーター・ゲスナー演出の『アンソニーとクレオパトラ』の演出助手として忙しい最中だったのだが、前日の夜中に軽井沢に着いて、昼過ぎに東京に帰る、というとんぼ返りで協力してくれた。

 日本民話の『あたまにかきのき』は、頭上に柿の種を落とされて、頭に柿の木が生えてしまった男の話。やがて実った柿の実を売って儲けたが、同業者に木を切られてしまい、その切株に生えたキノコを売ると、また同業者に恨まれて切株を掘り取られ、掘った穴に水がたまると泥鰌が住み着き、泥鰌を売って・・・と、途方もない話が続く。現実にどんな頭だろうと考えてしまうと、この話は成り立たないのだが、頭が池になったら、寝たとき水がこぼれる、とふと思ってしまったりすると、ああ、私も大人になってしまったと、がっかりする。とはいえ、そこは絵本のこと、村上豊の絵が、見事に昔話の世界に読者を引き戻してくれる。

 さて、せせらぎ文庫フェスタも、あとは8月1日(月)を残すばかりになった。
最終日は、渡辺万里氏のスペイン語の絵本の読み聞かせと、ビリー・ブラウンとその一座による"Hounted House"が、前の2日間と趣を変えてくれる。少し風邪気味だった、ポプコ・円谷氏も元気を取り戻し、どんぐりのクッキーなどで活躍の予定。ジニアス・円谷氏は3日間、6回の公演?を違うネタで、常連になった子ども達に目新しい実験をと張り切り、2日目の昨日は、静電気の実験で、体の丈夫そうな子どもと大人5人づつが手をつないで、一瞬体を通り抜ける静電気にギャッと叫んで、大喜びしていた。1日遅れて2日目から参加の滝本つみき氏のMCで、フェスタの変換もスムーズになり、刈田氏の愛弟子、ポプコ氏の折紙も引き続き好評で、折紙目当てで、昼休みだけ参加する子どもがあったりもしている。

 最終日、当日の参加も、もちろん大歓迎!はなそう会も、Kハウスのスペシャルカレーと、スペイン料理の差入れ!プレモルもアルコールフリーも、大人の皆様をお待ちしている。

2016年8月 2日

『はなのすきなうし』岩波少年文庫

 むかし、スペインに フェルジナンドといううしがすんでいました・・・で始まるこの小型絵本は、多くの人の心のふるさと。8月1日の「せせらぎ文庫フェスタ」で、このスペイン語の読み聞かせを聞くことができた。渡辺万里氏の読み聞かせは聞きやすくて、「フェルジナンド」や「マタドール」などなど、お馴染みの単語を聞き取ることができた。だまってコルクの木の下に坐って、花の匂いを嗅ぐのが好きなフェルジナンドだったのに、クマンバチに刺されたおかげで、闘牛に選ばれてしまう。この日本語版の訳者を、今、ど忘れしてしまったのだが、「うしとはいえ、もののわかったおかあさんだったので」、という一行が好きで、私も自分のフェルジナンド達を、好きなようにさせて育てたものだった。え?何もしてやらなかっただけ?そういう考え方もあるけど。

 ・・・・という、穏やかな、楽しい気分で、今年のせせらぎ文庫フェスタも幕を下ろし、今日は静かな休日。おはらしょうすけさんのように、朝からお風呂に入り、もう一度、とろとろしたりしていたら、もうお昼の時間。今日中に3日分のカレーを作って、明日は、もっとゆっくり休もう、と計画しているのだが・・・・。

2016年8月 4日

グリム童話『あめふらし』出久根育絵 偕成社

 グリム童話には怖い、というか、残酷なお話が沢山あるが、この出久根育の絵はなんだか怖い。地に黒を使っているせいもあるが、人も魚もキツネも猫も、みんな白目がちで、もの言いたげである。絵が、絵ではなく、芝居の一場面を見ているように、セリフが聞こえてくるような気がする。
でも、このお話、『あめふらし』は、それほど怖くもない。少し残酷なところもあるけど。

 アメフラシというのは、海に住んでいるナメクジのような生物で、「うみうし」と呼ぶ地方もある。アメフラシが水中で紫色の液を出すと、雨雲が立ち込めるように見える様子から、「アメフラシが岩場に集まると雨が降る」といわれるのだが、これは、アメフラシが産卵のために岩場に現れる時期が梅雨と重なるからなのだそうだ。

 お話が始まっても、アメフラシはなかなか出てこない。昔ある国に王女がいて、お城の高い塔には12個の窓があって、1番目から12番目まで、だんだんに詳しく、よく見えるようになっているので、王女は国中にの出来事を、地面の下まで、とてもよく見ることができた。王女は結婚相手を選ぶにあたって、塔から見ても分からない場所に隠れること、という条件を出し、もし見つかったら、さらし首にする、とお触れを出した。次々とさらし首が増え、97本の杭が並んだので、名乗り出る者がいなくなった。

 ところが3人の兄弟が運試しをすることになり、杭が2本増えた。末の弟は「2度目までは見つかっても許してください。3度目に見つかったらこの首を差し上げます」と条件を付けて、許しを得る。そして、カラスと魚とキツネの命を助け、その代わりに彼らに隠れ場所を探してもらう。

 ん?まだ、アメフラシが出ない?そう、最後の最後に「あめふらし」が出てくる。勿論、子どもの絵本だが、大人が読んでも十分面白いし、絵に、何とも言えない雰囲気がある。

 せせらぎ文庫フェスタが終わったので、今日はマジメに絵本を取り上げてみた。今年のフェスタは、心身ともに疲れ切ったし、フェスタの前に、いろいろなことが起きて準備がほとんどできなかったので、なんだかやった気がしない。これまでと違う子ども達が来てくれたのは嬉しかったけれど、懐かしい子たちは、みんな大きくなりすぎて、見上げないと話ができない。大人になってしまった!あーあ。

 でも、例年フェスタをしていた海の日の連休に、嬉しいことがあった。2人の高校生が現れて、「6年位前に来ていたんだけど、覚てますか」という、幼顔がぼんやりと浮かんだ。アメリカの高校に留学していて、年齢的には1年生だけど、飛び級したので来年受験です、という。もう一人の子は、ハングルが読めない私に、韓国語の絵本を読んで訳してくれた。

 フェスタがあると思って来る子がいるかも、と思って、文庫に行っていて良かった!
来年からどうしようかな、と。いろいろ思い惑っている。

2016年8月14日

『人生のずる休み』北杜夫著 河出書房新書

 夏休みだから、でもないけれど、明日のFM軽井沢「魔法使いの本棚」では、この本を紹介したいと思う。
これは、昨年?・・・一昨年かもしれない!この頃、月日のたつのが矢の様どころか、瞬間移動の様に早くて、あっという間に後期高齢者になってしまった。だって、今月は、ではない、もう先月!先月の22日は私の誕生日で、今まで、人生の区切りのような年には、ちゃんと友人を招いて、規模はそれぞれだが、パーティを開くことにしていた。それなのに、後期高齢者記念?の今年の誕生日を、いつの間にか過ごしてしまうなんて!!

 いえ、お電話やらカードやら、FBでもいろいろな方からメッセージも頂いて、その瞬間はとても嬉しかったのに、嬉しさを味わう暇もなく、1ヶ月近くワープしてしまったわけで・・・。

 せっかく、北杜夫夫人が、胸に抱えてきてくださって、「せせらぎ文庫」に寄付して頂いたのに、昨年か一昨年か覚えていなくても、許して頂けるでしょうか。そうですね、一昨年だと思います。昨年のフェスタには、お嬢様とご一緒にフェスタと「はなそう会」に参加して下さって、戴いた他のご本の話をしたと思います。今年のフェスタにも、参加して下さるとの話を聞いていたのに、こちらから何の連絡もできなくて、当日になって「しまった!」と思いだしても、文字通り「あとのフェスタ」。

 そんな曰くの「ずる休み」というエッセイ、これは著者の没後、といっても3周忌だが、生前の著作の中から30余りを取り上げて編集してある。巻末に出典一覧があるが、著者自身のあとがきがないのが不思議に思えるほど、生き生きとして、愚痴っぽい。居間に寛いで語るのを、聞いている感覚で安らぎを感じる。

 年を取るにつれて、躁鬱病をはじめとする病気に悩まされ、私は精神病医だから、ちゃんとわかっている、と自分で精神状態を、ちゃんと?制御している様子が良くわかる。良き奥様と親孝行な娘さん(あたかも、困ったやつらだと言わんばかりに目を細めて描かれているが)に囲まれて、幸せな老後をおくられたのだということが良く分かる。

 これにも書かれているが、夏の間は中軽井沢の別荘に滞在されたので、近頃の軽井沢の様子が、何気なく描かれていて、他の作者が描く「軽井沢」とは、一味違っているのがうれしい。なぜかといえば、この頃は、地図上で「軽井沢」と書かれているところは、みんな軽井沢と呼ばれてしまっているが(あたりまえと言われればあたりまえだが)、ここにはちゃんと、中軽井沢とか、旧軽井沢とか分けて書かれていて、軽井沢の人間としては、この方があたりまえなので、有名な作家なのにもったいないが「仲間意識」で読んでしまう。

 一度、別荘の人と地元の人との交流会で車椅子姿をお見かけしたのだが、根が内気なものだから、ご挨拶もできなかった。奥様とお話しできるようになったのは、残念ながら亡くなられてからだった。「人の命の、つゆの晴れ間をまつものかは」。
 だから、いろいろな方とお話するチャンスを、逃したくなくて、近頃は特に、出られる会合はできるだけ参加するようにしていたら、とうとう過労で寝込んでしまうテイタラク。「元気な振りをするのは、やめなさいよ」と友人に警告されているのだが、明日もFM軽井沢で、元気に「こんにちわ!」とご挨拶できますように。
『人生のずる休み』って、なかなかできない、難しい課題かもしれない。


人生のずる休み

(ASIN: 430902226X)
北 杜夫  
河出書房新社 / 在庫あり。