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2007年11月

2007年11月 2日

茶の本(英文収録) 岡倉天心 著 桶谷秀昭 訳 講談社 刊

本来英語で書かれた本なのだから、英文収録、というのもなんだかおかしいが、
講談社から学術文庫として、薄手の文庫本に、日英両文が含まれているので、
バッグに入れて持ち歩いて読めるのが嬉しい。

「茶英会」という裏千家のグループで、もう何十年もこの一冊を繰り返し読んで
勉強しているのだが、何回読んでも、岡倉天心の英語は私にはひどく難解である。
それでも、毎月一回、担当した人が音読して和訳し、出てくる色々な事柄を調べて
発表してくれるので、少しずつ、本当に少しずつだが、この難しい本が分かり始めている。

勉強会の最中に、そっと桶谷さんの訳のページを繰ってカンニングているが、必ずしも
解釈が発表者と同じでない所が面白い。発表者は若いので、文章は彼女たちの訳の方が
分かりやすいような気がする。

岡倉天心は、茶道を、世界に誇る日本の文化として紹介したかったようで、ときおり
西洋文化が、ケチョンケチョンにけなされていたりもするが、日本の歴史の移り変わりが、
決して芸術と無関係ではいられなかった時代を、正確な英語で描いているのが貴重である。

せせらぎ文庫では文庫本の棚に、肩身が狭そうに並んでいるが、文庫に来る人たちが、
ボロボロになるまで読み込んでくれたら、もうすこし大きな版を買いたい。


英文収録 茶の本 (講談社学術文庫)

(ASIN: 406159138X) / 岡倉 天心

/ 講談社 / 通常1~4週間以内に発送

2007年11月 7日

『あらしのよるに』木村裕一作 あべ弘士絵 講談社 と 『いないいないばあ あそび』木村裕一作 偕成社

 映画でもTVでも紹介されているから、この作品を知っている人は多いと思うが、やはり原作には原作の良さがあって、読むからこそ頭の中で新しい世界が広がり、一冊の本から生まれた物語が、貴女だけの世界の、貴女だけの物語になる。殊にこの『あらしのよるに』は・・・・

 嵐の夜の洞穴の中で、狼とヤギが出会い、お互いの本性を知らぬままに話が合い、気が合ってしまう。微妙に主語がすれちがって、読み手をはらはらさせながら、翌日また会おうね、と約束しながら別れるところで、第一巻がおわる。このハラハラドキドキが7巻まで続く。

 狼とヤギを男女に見立てて、切ないラブストーリーだという人を始め、種族を超えた真の友情だと素直に感激する人もあり、読む人によってさまざまなのが面白い。

 この本を読んでしまうと、木村裕一という人はストーリー作家であり、「この本は子どもの絵本になっているけれど、本当は小説家なんじゃないの」といいたくなるが、おっとどっこい、木村裕一さんは、私の好きな絵本作家の一人で、しかも幼児向きの優れた絵本をたくさん出している。

 仕掛け絵本が多くて、幼児がおもちゃのように遊びながらことばを覚える。私が今手放せないのは
『いないいないばあ あそび』(偕成社)で、子どもの目の前で、犬や猫や怪獣やお母さんが、いないいないばあをしてくれる。あ、この本は、まだせせらぎ文庫には入れていない。

 木村裕一さんと初めて会ったのは、1986年IBBY東京大会で、ボランティア委員長の大役を仰せ付かったとき、「おもちゃ作家」として紹介されたように思う。手作りおもちゃの大家だというので、恐る恐る作品の展示をお願いし、「子どもに触らせないようにしますから」といったら「子どもに触らせなきゃ意味が無いでしょう。いいですよ、こわれたら直しますから」といわれて、いっぺんに好きになった。シャイで、ほとんど口を利いて下さらないが、ことば少なに話しているのに、なぜかとても心が温かくなる。

2007年11月13日

紙芝居

 11月10日 オーストラリアの南十字星文庫に紙芝居を送りたくて、書店にはほとんど無い「紙芝居」の現状を知っておこうと、「紙芝居文化の会」に参加した。IBBY(国際児童図書評議会)等でお目にかかって何回かお話もしたジュヌヴィエーヴ・パットさんが参加されるというのも今回の例会の魅力だったのだが、パットさんが体調を崩され来日できなくなったとJBBYからの連絡で知って、時間の都合もあり、懇親会と二日目の分科会はあきらめて不参加に予定変更した。

 早めに行っていろいろなお話を聞こうと、総会は午後からだという時間表もチェックせずに早朝から家を飛び出し、せせらぎ文庫に直行するつもりの重い荷物を抱えたまま、3時間も吉祥寺の町をさまよって右膝の痛みを再発させてしまった。オロカナリ!

 さて、紙芝居文化の会では「紙芝居の演じ方」がテーマになっていたようで、子ども達に語りかけ、応えさせて、会場ぐるみ楽しむ、というところに紙芝居の価値を求めているようで、絵本の読み聞かせの延長線上に紙芝居を置いている「文庫」の考え方とは、微妙にずれている気がした。どちらも正しいのだが、淡々と読んだのでは意味が無いような紙芝居がたくさん出ている事を知った。もちろん上手に演じれば子ども達には大うけなのだが・・・・

 その日のうちにせせらぎに着きたかったので、ICBAで散々お世話になっている紙芝居文化の会会長のまついのりこさん自作自演『ごきげんのわるいコックさん』の紙芝居を見て、失礼したが、入手した資料の中に、良い紙芝居の選び方を示唆したものがたくさんあり、童心社の分厚いカタログも貰ったので、長野新幹線で軽井沢までの一時間、充分に良い紙芝居を選ぶことができた。

 民話、昔話を中心に、演じ方で勝負するのでなく、紙芝居の物語性を重視した作品を選び出したのだが、もうひとつほしかった数学の基礎、まついのりこさんの数の絵本の紙芝居版がほとんど無いのが残念だった。ご長女の松井エイ子さんの、数学の基礎、的な作品はあるのだが、数よりも立体の概念が中心になっているようなので、カタログだけでは検討できない。昔話なども含めて、実物を見てから購入したいと思っている。

2007年11月20日

今度は11月24日(土)

 今月最後の文庫、といっても2回目なのですが、24日土曜日の11時から14時開迄開きます。
毎週日曜の昼前後、と決めたいのですが、なかなかそこまでは軌道に乗りません。
でも、前回文庫にみえたMさんに、新しい絵本の貸出しカード書きをおねがいしたら、快く、
引き受けてくださいました。

 図書館だと、貸出用と整理用、分類用に3種作るのですが(本当は文庫でも)、せせらぎ文庫は
初めからあきらめて、貸出用と整理用だけです。整理用兼分類用はブルーの無地で、その本に関する情報をなるべくたくさん書き込みます。何シリーズの何巻目だとか、著者からの寄贈だとか。
整理カードは番号順に箱に入れてしまってあります。

 貸出カードはオレンジ色で、最小限の情報、つまり、書名、作者名、カード番号だけを、正確に記入します。すべての本にはさんであるので、多くの人の目に触れます。ところが私は字が下手で、「書く」と思っただけで手が震えるほどのプレッシャーなのです。だから、Mさんが貸出カードを引き受けてくださったのが、どんなに嬉しかったか知れません。

 というわけで24日は、貸出カードから開放されて、新しく購入したい本のリストつくりでもしたいと思っています。オーストラリアの南十字星文庫のためにも。

2007年11月21日

風花

 11月21日 中軽井沢の駅舎から出ると、冷たく湿った夜の空気につつまれた。軽井沢の夜は、東京に比べると、本当に暗い。灯の差さない真っ暗闇が直ぐそこにある。タクシーに乗らずに、駅前の「鉢巻」に向かうと、街灯の明かりの中に、白いものが舞っていた。舞い落ちる軽やかな動きは羽毛のようで、思わず駆け出すと、もう光がなくなって見えなくなってしまった。

 夏に生まれたのに、雪が好きでたまらない。四季の中でも冬が好きだ。この軽井沢の、キーンと冷える寒さが好き!「鉢巻」はラーメンがおいしいからラーメンやさんなのかもしれないが、実は刺身定食のお刺身がとてもおいしい。この山の中で魚が恋しくなると「鉢巻」に行く。今日も口の中で溶けてゆくお刺身で一杯やりながら「明日、つもるといいな」というと「舞ってるだけでつもらないよ」と笑われた。明日の朝は冷えるというから、部屋のストーブはつけたままで寝よう。つもらないかなあ・・・

 あ、明日はせせらぎ文庫で、Mさんと、そのお友達に会うことになっている。とっても楽しみ。

2007年11月23日

良い夫婦の日に

11月22日 もう昨日になってしまったが、イイフーフの日に、せせらぎ文庫に、4人の良いお母さんが集まった(あ、私を入れると五人だけど・・・)。みんな、三年生の子どものお母さんで、まじめにお母さん業を努めているばかりか、ちゃんと「社会」にも目が向いていて、政治が悪い、教育制度が悪いとマスコミに毒されて人のせいにばかりしている主婦と違って、「私たちが意見を言いにいかなかったのがいけないのね」「そんな建物が出来上がらないうちにナントカしなきゃ」「誰に話しに行けばいいの」と、具体的に話し合っている。

勿論本の話もして、その子どもに合った本の選び方とか、家庭教育の大切さとか、その家庭毎の文化を自信を持って子どもに伝えるべきだとか、10時半から1時半まで、ずーっとおしゃべりをして、最後にみんな5,6冊ずつ本を借りて帰ったけれど、私が話したことなんか、きっとちゃんと解っているお母さん達だったなあ、と思った。今日の会をセッティングしてくれたMさんに任せておけば、少しずつ、充実した集まりになって、良い文庫が完成するような気がする。

Mさんが貸出カードを仕上げておいてくれたので、また10数冊、分類カードだけ書いて、お弁当を食べて番号の整理をしたら、結局3時頃になってしまったけれど、充実した一日になった。

次のせせらぎ文庫はあさって、11月24日(土)11時から14時です。

2007年11月24日

『ねはんえ』花岡大学文 井口文秀絵 すずき出版(日本仏教保育協会編)

「ねはんえ」は勿論、涅槃会のことで、お釈迦様のエピソードがいくつか挙げられ、最後の教えと、人や動物達に取り囲まれて亡くなられたそのときの様子が、描かれている。

わずかに7シーンの、ことばも少ない絵本だが、お釈迦様への敬意と仏教のもと「仏さまの教え」が、幼い子どもに、よく感じ取れるように書かれている。巻末に花岡大学自身が、幼児には無理に説明したり、「死」の暗いイメージを避けようとするのでなく、死は悲しみであることを感じさせ、自然に考える方向に向けていくように、と書いている。40年前の『こどものくに』の復刻版だが、仏教について、少しずつ子どもに考えさせようというこの「こどものくに仏教名作絵本」の目的に沿って、成功している。

せせらぎ文庫には、世田谷の円光院(真言宗)から寄贈された『仏教聖典』も置いてあり、その最初の「ほとけ」という部の第1章第1節にこのお釈迦様の旅から涅槃までのエピソードが詳しく、読みやすく書かれている。絵本を読んだ子どもが仏教に興味を持つようなら、親はこれを読んでみると、仏教聖典にも、聖書物語と同様、面白い物語がたくさんあることがわかる。

せせらぎ文庫から歩いて10分ほどのところに「童心ギャラリー」という小さなギャラリーがあり、この絵本の画家井口文集の絵本とその原画が飾られている。実はこの絵本も、このギャラリーの館長である福田赳夫氏、元首相と同姓同名の井口文秀氏の娘婿に当たる方からの寄贈である。


涅槃会の研究―涅槃会と涅槃図

(ASIN: 4794009003)
元興寺文化財研究所  
元興寺文化財研究所