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2014年12月

2014年12月 7日

クリスマス物語 ヤン・ピアンコフスキー絵 講談社

 今日のFM軽井沢、「魔法使いの本棚」で、紹介した本です。 見返しにピアンコフスキーさんのサインがあったので、ついJBBY、日本児童図書評議会の紹介もしてしまいました。Japan Board on Books for Young People の頭文字ですが、日本の児童文学関係者、つまり作者、イラストレーター、翻訳家の他に、出版社や図書館関係者に、読み手、愛好者も含めての集まりです。

日本の作者は勿論、来日している外国人の、子どもの本の作者などの講演会や懇親会がよく開催されるので、会員になると、良い本の情報が、自然に耳に入ります。

 というわけで、この本を入手することが出来たのですが、欽定聖書の絵本だからでしょうか、売切れで、現在入手が難しくなっているようです。ア、放送では言い忘れましたが、英語と日本語の両方で書かれているので、更に、貴重な本と言えます。

 ヨセフの婚約者であるマリアに、天使による受胎告知があり、二人は謹んでその告知を受け、「住民登録」をするためにベツレヘムに向かいます。旅の途中で、宿もなく、マリアは馬小屋に泊まり、生まれたイエス様は飼葉桶に寝かされます。東方からの3人の博士や、羊飼いたちの、よく知っている物語が、ピアンコフフスキーの神秘的な影絵で描かれています。

 クリスマスの意味を知るために、子ども達には「クリスマス」がなんの御祝いなのか、よく話しておきたいものです。お話が苦手なお父さんお母さんには、絵本の読み聞かせをおすすめします。

2014年12月 8日

サンタベアーのクリスマス バーバラ・リード作 舟崎克彦訳 架空社 

 作者の次に ハワード・B・ルイス絵、と書くべきなのだが、この本が舟崎先生の訳だとは、今まで気が付かなかったから、びっくりしてしまった! 1988年の本だから、40代で買ったことになる。 見返しにクリスマスローズの絵葉書が挟んであるところを見ると、誰かから贈られて、お礼状を書くつもりで、そのまま忘れているのかもしれない。因みにクリスマスローズは、日本では春先に咲くものが多いが、ヨーロッパに野生しているのは冬に咲くのだと言われている。・・・・薄紫のクリスマスローズの絵葉書を、誰に送るつもりだったのだろう。

 ずっと更新しなかったブログを、昨日に続いて今日、また書く気になったのは、NHKのスーパープレゼンテーションで「1000 Awesome」をみたから。インド人を父に持つ彼(例によって名前を覚えてない!)は、1000 Awesome という自身のブログで、日常の小さな喜びを書き続けた、というのだ。面白いと思ったのは、1000個見つけようと思って、1000からカウントダウンしたという点。でも、それを真似したいわけではない。彼は、こうも言っている。「こんなにたくさんの喜びがあるのに、残念なことに人間は、100年しか生きられない。そして、現在より若くなることも出来ない。それなら(小さな喜びをたくさん味わうためには)前向きに生きてゆくしかない」と。

 なるほど、私が最長の長寿を得て120歳まで生きるにしても、あと50年弱しか生きられないし、いわんや、あの占い師の言うように、来年の節分まで生き抜ければ84歳まで生きるがというのなら、あと10年。節分までなら2ヶ月足らずしか残されていない。50日しかないのなら、毎日書いても、50冊しか紹介できないではないか!それではなんのかんのと言っていないで、手近にある本を毎日紹介してゆこう。なんと安易にTVの影響をうけてしまったことか。

 今、このパソコンのディスプレイとキーボードの間の棚に、約40冊のお気に入りの本が並んでいる。ベッドのヘッドボード代わりに作らせた横長のケースには、60冊のお気に入りの文庫本がある。TVの右側の本棚に600冊。左側の茶箪笥にも、多分500冊以上のいろいろな本。この部屋だけでも1000冊以上の・・・ア、片隅の衣装ケースの上にも絵本が30冊。数えているだけで時間がたってしまう。TVの下にも80冊。東京の「たんこぶんこ」、足し算の好きな人は足してみてください。イヤダ、本棚の上に25冊、他の部屋に二重の大きな本棚が2つ、3つ、もうやーめた。

 本題。しろくまの子、サンタベアーが、どうしてサンタべアーと呼ばれるようになったか、というお話。 家族揃って氷の上で遊んでいたのに氷が割れて、白いこぐまは一人で遠くまで流され、森に流れ着きます。幸いなことにメアリーという女の子に助けられ、メアリーとおじいさんと3人で暮らすのですが、クリスマスイヴにおじいさんが冷たい川に落ちてしまいます。凍えているおじいさんのために、こぐまは薪を集めに行きますが、いろいろな動物が助けてくれたのに、なかなか薪が集まりません。

 すると空からサンタクロースが降りてきて、こぐまのために木を切って薪を作ってくれます。おじいさんを気遣うメアリーの耳にジングルベルの音が聞こえ、サンタクロースの後ろから、小さなそりに薪を積んで引っ張ってくるこぐまが見えます。おじいさんはようやく元気になり、こぐまはサンタクロースに、「代わりに森の動物にプレゼントを配っておくれ」と頼まれてしまいます。

 くたくたになってプレゼントを配り終わったこぐまに、サンタクロースは「これからも、クリスマスにはお手伝いをしてもらおう」と言って、お揃いの帽子と赤いマフラーを渡し、「もう一つお願いを聞いてあげよう」と言います。「おうちへかえりたい」というこぐまをそりに乗せて、サンタクロースは北の国へ戻ってゆきます。メアリーやおじいさんと別れるのは辛いけど、サンタベアーは每年クリスマスにはサンタさんと一緒にやってくるんだから寂しくないね、というお話。

 最後にはちゃんと家族に会えたページもあり、どの絵もこぐまが微笑ましくて、字の読めない子にも好かれるに違いない絵本。
あーあ、たくさんあらすじを書きすぎですね。でも、このストーリーには、もっともっとたくさん、心の温まるエピソードも含まれているのです。こういう良い本に限って絶版になっているかもしれないので、本屋さんにあるかどうかわかりませんが、見つけたら、入手されることをお勧めします。  2時過ぎちゃった。 おやすみなさい。

『どうしてクリスマスには・・・』 二宮由紀子文 木曽秀夫絵 文研出版

 まずページを開くと、6コマ漫画風に、雪の壁の向こうに赤い三角と白いポンポンが現れ、次のコマでそれが少し大きくなり、次にその帽子を冠ったサンタクロースの顔と、何やら白い大きな山盛り・・・と、木の枝みたいなものが二本。勿論、雪の道を走るサンタとトナカイ&大きなプレゼント袋を積んだソリ。
そして曰く「どうして クリスマスには、サンタクロースが トナカイの ひく そりに のって やってくるか しってる?」

 次のページは横長の3コマ漫画で、トナカイがへばったので、サンタクロースがトナカイと入れ替わり、サンタクロースもへたばってしまう、という3コマ。
そして曰く「それはね、サンタクロースが トナカイの のる そりを ひいて やってこられるほど ちからもちじゃないから。」だって。

 こういう調子で、どうしてリースを玄関ドアに飾るか、とか、どうして友達にクリスマスカードを送るか、とか、どうしてクリスマスにはクリスマスソングを歌うか、などなど、質問が続き、答えが出てくる。
そして最後のページは、「どうか どうか ひとりでも たくさんのひとたちに」 「くりすますの しあわせが ありますように!」で締めくくられている。

 ごくありふれた質問に、パンチの効いた?あるいはひとひねり、ふたひねりした答え。淡いブルーを基調にした、優しい絵本です。

2014年12月 9日

『サンタクロースって いるんでしょうか?』 ニューヨーク・サン紙 より 偕成社

 これは1897年9月、というから100年以上前のニューヨーク・サン紙に取り上げられた、バージニアという8歳の少女の手紙に、同社の記者フランシス・チャーチが答えた、有名な社説。

 友人に「サンタクロースなんていない」と言われて傷ついたバージニアに、父親は、サン新聞に聞いてごらん。新聞でサンタクロースがいるというなら、「そりゃもう、たしかにいるんだろうよ」と言ったから、「おねがいです。おしえてください。サンタクロースって、ほんとうに、いるんでしょうか?」と、バージニアの手紙で問うている。

 この、短いけれど真剣な質問に、フランシス・チャーチ記者はまじめに、真剣に答えている。「そうです、バージニア。サンタクロースがいるというのは、決して嘘ではありません。」の一文は世界中で有名になり、支持されている。

 日本、特に東京では、12月になるとあちこちにサンタクロースの姿が現れ、小生意気な、心の貧しい子どもは、「ほら、サンタクロースなんてにせものよ」「クリスマスの朝、枕元においてあるプレゼントは、お父さんか、お母さんがおいているのよ」などと得意になる。
そして、子ども達が少し大きくなると、「実はサンタクロースなんていないのさ、いるわけないだろう」などと、とくとくと底の浅い説明をする馬鹿な親がたくさんいる。

 プレゼントを枕元に置くのは、親の手かもしれない。しかし、それを置かせるのは、遠くから届く大きな愛であり、子ども達に幸せを、というサンタクロースの大きな愛があるからこそ、世界中のたくさんの子どもたちに、何らかのプレゼントが、様々な手段で届けられる。この習慣が日本で盛んになりはじめた頃には、日本の子どもたちにとって、その習慣が必要だったから。その名前がサンタクロースと呼ばれようと、タイガーマスクと名乗ろうと、その人にそうさせているのは、ちゃんと存在しているサンタクロースの愛である。

 サンタクロースのふりをしている人が多いだけに、サンタクロースの存在を子ども達に説明するのは難しいが、まずはこの本が、サンタクロースが実在すると証明してくれている。バージニアのパパのことばを借りれば、新聞社でサンタクロースがいる、といっているのですから「そりゃもう、たしかに」いるに違いない。

 大人が子どもに、まっすぐにまじめに答えている、素晴らしい本。中村妙子訳。ひらがなが多く、ルビも付いているので、幼い子でも自分で読むことができる。

2014年12月12日

クリスマスのおばけ せなけいこ作 ポプラ社

 久しぶりに下高井戸の本屋さんに行った。エキナカのあって、文庫本と子どもの本が充実しているので、割合と好きな店だったのだが、今日覗いてみると、様子が違う。
 
 なんと! 子どものコーナーが、びっしりとコミックの詰まった本置き場、のような有り様になっている。まるで、コミックは売れるから仕入れた本を全部詰め込んだ、という感じで、同じような白っぽい背表紙が虫のようにびっしりと張り付いているのが不気味だ。

 店の中央部分は文庫本が多く、親切なポップがついていて、外れの、つまり、面白くない本を選ばずに済むようになっている。今日も、文庫本のコーナーは変わらなくて、むしろ売れている本は、あちこちに散らばらせてあって、あっちでもこっちでも目につく。だからといって、押し売りしていない感じが良い。

 でも、文庫本も内容が少し変わったように思う。以前はまんべんなく、いろいろな傾向の本があったが、今は、日本の作家の、売れ筋の本が明らかに多い。スティーブン・キングとか、あのあたりの、つい読みたくなる翻訳物、ハヤカワ文庫などが極端に少なくなってしまった。アガザクリスティーの新しい版の文庫が並んでいたのは嬉しかったが、結局は、読んだかもしれない東野圭吾の1冊と、『タルトタタンの夢』という名探偵物を買ってしまった。

 ところが、子どものコーナーは右奥の隅に追いやられ、あんなに良い本がたくさんあったのに、何処にやってしまったのか、アンパンマンと、アナ雪しかない。クリスマスだからと、親があの本屋に行ったらどうしよう、と思ったら、棚の一番端っこに、せなけいこの、この本を見つけた。

 クリスマスは、ごく普通に、幼稚園でお遊戯会があり、クリスマスツリーが飾られ、ケーキを食べて、サンタさんからプレゼントも貰えるが、お化けには、ケーキもプレゼントもない。.........・真っ暗だし。だから、ケーキを分けてあげて、懐中電灯も貸してあげて、お母さんに頼んで、お化け用のセーターを編んでもらったら、お化けは喜ぶんじゃないかな、という優しい気持ちになれるお話。

 この頃のお化けは怖くないし、子どもは自分の心のなかにある優しさに気づいてないだけだから、ちょっと、プレゼントを貰えないお化けのお話をしてあげてはいかが、というような、作者からのメッセージも、巻末にある。

 こんな良い絵本が置いてあったから、まあ、売れ筋ばかりに変わってしまった本屋も許してあげるべきだろうか。

 「もう少し,子どものちゃんとした本を置いてくださいね」といったら、「店が狭いものですから」と、店員が口答えした。決して狭い本屋ではない。少し前までは、ちゃんとした本揃えだったし、ない本をすぐ見つけてくれる、良い店員さんも数人いた。「狭かったら漫画を減らせばいいでしょう。前はちゃんとしていたじゃないの」と声をとがらせてしまった。

 大人の本は売れ筋だけでも良い。子どもの本は、最低限、まともな本を置いてほしい。本当にセナさんの本があってよかった! このクリスマスのお化けだけだったけれども、まだ3冊くらい残っていた。これが売れてしまわないうちに、セナさんの他の本でも、福音館とか、こぐま社とか、鈴木出版の子どもの本を入れてほしい。お願いだから。

2014年12月14日

『やぎや』長野ヒデ子作 スズキコージ絵 鈴木出版

 明日のFM軽井沢、11時10分ころから「魔法使いの本棚」を聞く人は読まないでね。ラジオでも、この本を紹介したいので。
 
 長野ヒデ子さんという方は、JBBYの会などで、何回かお見かけしているのだが、上品で、静かな方で、とてもこの絵本の作者とは思えない。いえ、決してこの本が、上品でないというわけではありませんが・・・・。 すごくエネルギッシュというか、やぎの臭いがするような、『アルプスの少女』のハイジになったような気がする絵本です。あ、ハイジより、ペーターかな。

 町外れの森に、やぎの一家7人が暮らしていた。お父さんやぎは家や家具を作り、お母さんはぐるぐるかき混ぜてチーズを作る。みんな「うめえー うめえー」。兄さんやぎの作るパンも「うめえーうめえー」。姉さんやぎの作るスープもおいしいので、周りのみんながうらやましがるので、お店を開いて「やぎや」と命名。やぎやはお客で大繁盛!お客が揃って「うめえーうめえー」という話。

 それだけの話なのだが、なんだかそれだけではない。スズキコージの絵の中で、働き者のやぎの一家が、いかにも楽しそうに仲良く働いていて、大人の方が絵本に引きこまれてしまう。「うめえーうめえー」なんていうオジンギャグを、子どもと一緒に楽しめる。
これが絵本の魔法なんだな。子どもがいてもいなくても、居間に一冊、おいておきたい絵本。

 

 

『もじゃもじゃヒューシャンクス』カレン・ジョージ作・絵 鈴木出版

 たぶん昨年、FM軽井沢で紹介した本だが、東京の自宅から、携帯での紹介だったと思う。どうも絵の楽しさが、充分表現できなかった。 軽井沢駅舎の「さわやかハット」の中にあるFM軽井沢のスタジオで、宮尾博子さんの絶妙な話術に引っ張られていると、絵本の紹介も何気なく出来てしまうし、こちらのテーブルから、機材越しに絵本を見せながら喋っていると、「明るい色調ですね」等と、さり気なく、私の説明不足を補って貰える。プロなんだなあ!

 というわけで、カレン。ジョージの絵は、イギリス人らしい、シックな色調。たとえば表紙はヒュー・シャンプーという男の子の頭が、4分の1ぐらいを占めているのだが、迷彩服のような渋い茶色と緑が交じり合い、ピンクと黄色とグレイッシュブルーが、バラやレモンや小さな葉っぱになっていて、そのモジャモジャと絡まった丸いものが、もつれたアフロのようになったヒュー・シャンクの頭で、よく見ると、小さなかたつむりや、けっこう長いミミズも数匹、髪の中に潜り込んでいる。無邪気な男の子の顔が半分覗いていて、上品なサーモンピンクのTシャツを着ている。背景は、ちょっとくすんだ空色・・・といった具合。

 シャンプーという苗字なのに、ヒューくんはシャンプーが大嫌い。絶対に洗わないと決めているから、ヒューくんの頭は、いつも、もじゃもじゃ、くしゃくしゃ、べっとべと! パパやママが、上からお湯をかけてしまおうとすると傘をさして防ぐし、クシでとかそうとすると、ヘルメットをかぶってしまう。パパとママは美容師さんで、家は美容院だったから、二人はおお困り。

 あるときパパとママはコンテストに出場しようと、モデルを募集。おとなりの長い髪のイケガキサンがモデルに決まる。ところがコンテストの当日、生垣の前を通ったイケガキさんのアップにした髪を、反対側から生垣を刈っていたおじさんが、生垣ごとバッサリ! あーあ、コンテストに出られない。留守番していたヒュー・シャンプーは、出場できなくなったことを、ママに伝えに会場へ。

 バラの茂みをかき分け、原っぱを突っ切って、ドライヤーで吹き飛ばされてるようなスピードで駆けていった。発表ギリギリにパパとママの傍に行ったヒューを見た審査員は、「こんな髪型は見たことがありません」と、シャンプー家の優勝を宣言。

 優勝カップを抱えて寝ようとしたヒューの頭から、原っぱでくっついた虫やベトベトしたものが出てきて、気持ちが悪くて眠れない。シャンプーしてよ!と叫んだひゅーの頭を洗って、これでパパとママの夢が叶いました、というお話。

 どのページも、ヒュー・シャンプーのもじゃもじゃ頭が、色とりどりで美しく、可愛らしい。シャンプーしなければよかったのに、と思ってしまうほどだ。

2014年12月18日

子どもには薦めたくない絵本

 本の選び方について話をする機会が多いが、ついうっかり「良い本と悪い本が・・・」等と言ってしまうことがある。すると必ず、「悪い本ってどんな本ですか?」と聞かれる。子どもの本の話なんて、そんなに本気では聞いてないだろうと思うと、そうでもないらしい。確かに「悪い本」さえ覚えておけば、その本だけ除けばいい。でも、悪い本は定義が難しい。

 基本的に、良い本は「あなたが読んでみて、良いと思った本」。これは、親が子どもに本を選ぶ時、一番大切なことだ。親がまじめに読んで、これが良い、と本気で思った本なら、たとえ世界中の評論家が悪い本だと言っても、それはあなたの子どもにとっては、「良い本」であり、あなたが良いと思った本を読ませることが、あなたの文化をあなたの子どもに伝える、ということなのだから。

 どんな本でも、たった一行でも心に残る一文があるなら、それは良い本である、ということばがある。そして、たった一人かもしれないその人の心に残った、そのたった一行のために作家は書くのであり、書く価値があるのだ、と。これは、書いている人の立場からのことばである。

 書き始めてしまったのだが、今日のテーマは、どうも、とても書きにくい。でも、この際、書かなきゃね。
 私が悪い本だと分類するのは、正しくない日本語が使われている本である。分厚い本の中で、ひとことでも、間違った言い回しが使われていたら、少なくとも他人に、薦めることはしない。そういう本が一冊、ここにある。しかも、絵は素晴らしい。作者が子どもたちに伝えようとしているテーマも素晴らしい。エリック・カールの、大型絵本である。出版社も定評のある偕成社。この絵本を開いて読んだ時、どうしよう!と、青ざめてしまった。『えをかく かく かく』という題である。題も面白い。

 エリック・カールだって、自分で、まあまあ、と思う程度の仕上がりのこともあると思う。でも、この本の絵は、ページごと、どの絵も素晴らしい。色もいいし、第一絵に勢いがある。子どもたちに「絵はこうやって描くんだよ、ね、楽しいだろう」と語りかけている。
偕成社は訳者選びにも手を抜いていない。翻訳で、いろいろ賞を受けたりもしている、有名な人だ。でも、だからといって、子どもの本に、こんなことばの使い方はしてほしくない。洒落ているつもりだろうが。

 まず、「ものすごく あかい わにを」。これはまだ、我慢できる。次は「ずいぶんと きいろい うしを」。確かに宮沢賢治が、こんなことばの使い方をしている作品がある。しかし現在では「ずいぶんと きいろい」とは言わない。次は「まったく ピンクの うさぎを かくんだ」。「まったく ピンク」などという色はありえない。「みごとな みどりの ライオン!」は、まだいいかな。「すばらしく オレンジいろの ぞうを」。「すっかり むらさきいろの きつねを かいちゃう」。「こんどは とんでもなく くろい しろくまだ」。「かんぺきに みずたまもようの ろばまでも!」 
声を出して読んでいると、吐き気がしてくる。編集の人が苦労したのではないかと思うのだが、形容詞の部分は、前のページになっている。だから、ページを繰っている間に、子どもがこの形容詞を忘れてくれるかもしれない。でも、やはり我慢できない。我慢してはいけないと思う。

 しかし、絵がとても良いので、焚書にする気にはならない。中学生以上の、日本語がしっかり身についている子どもなら、読んでみて!という気になるかもしれない。海外の日本語文庫には絶対に送れないし、日本の文庫で注意書をつけておくわけにもいかない。多分、せせらぎ文庫フェスタの抽選会に出して、あたった子どものお母さんに、良く説明するか・・・いっそ形容詞の部分に白い紙を貼ってしまおうか・・・。本屋で飛ぶように売れてしまう本だと思うから、悩みが深い。

 

2014年12月21日

『ゆきひらの話』安房直子作 偕成社

 今の子どもには、ほとんど馴染みのない「ゆきひら」という小型の土鍋。片手鍋の仲間だが、握りが太めで、真ん中が太く、握りやすくなっている。おかゆなどを、一人二人の小人数のために、ゆっくり炊き込む料理に使う。・・・・と、文章で説明すると長くてわかりにくいが、絵に描いてしまえば、一目瞭然。その、ゆきひらのお話。

 ひとりぐらしのおばあさんが、風邪気味で寝込んでしまいます。猫でもいてくれれば寂しくないのに、と思っていると、台所の戸棚デ、コトコトと音がして、「だれですかー」と声をかけると、「ぼく、ゆきひらでーす」と返事があります。言われるままに戸棚を開けると、何十年も使わなかった行平が出てきます。

 そういえば「ゆきひら」っていう名前は、在原のなりひらを連想しますよね。遊び人の若い男。でも、このゆきひら君は、誠実に、おばあさんを思いやってくれます。「おかゆをつくりましょうか」「おかゆは食べたくないわ」「それなら野菜スープはどうですか」「スープは食べたくないわ。冷たいものが食べたい」。けっこう勝手なことを言っているおばあさんに、ゆきひら君は希望通り、冷たくて美味しいものを作ってくれます。

 何十年も使わなかった「ゆきひら」。断捨離とか言って、使わないものを次々捨ててゆくのが今の流行りですが、使えるものを使いこなしてゆくことができれば、もっと手軽に、豊かな生活が手に入るような気がします。

 田中清代の描くゆきひらが、いかにも暖かく、可愛らしくて、おばあさんにとっては、猫よりも手がかからなくて、役に立つだろうと思います。一人住まいで体調が悪くなって、心細かった一日。台所にしまい忘れていたゆきひらのおかげで、おばあさんは元気を取り戻しました。

 明日、12発21日(日)、11時10分頃からのFM軽井沢、「魔法使いの本棚fr」で、この本をご紹介します。お時間があったら、是非聞いて下さい」。

 今、朝の6時半。4時半に目が冷めてしまったので、ブログを書いていたのですが、眠くなってきたので寝ます。昨日のワインの飲み会に出席したのが間違い。うとうとしたあと、3時ころまで寝たり起きたりで、せっかく東京の夜更かしグセが治りかけていたのに、また今日からやり直し。放送までに目が覚めるかな。おやすみなさい。


ゆきひらの話 (安房直子名作絵童話)

(ASIN: 4033134107)
安房 直子  
偕成社 / 在庫あり。