2010年08月16日

ロンドン怪盗伝 筑摩書房

 また御無沙汰が続きました。体調は回復しつつありますが、日々の予定を消化するのが精一杯で、ブログに書き込む余力がありません。でも、まあ、ボツボツ・・・

 15日の日曜日、朝早く次男の一家が東京に帰ったので、お陰で一日がすごく長くて、いろいろなことが出来た。小鳥に餌をやったり、現れた虎ネコ(5年以上前に、軽井沢でいなくなったトリッチ・トラッチ・ポルカ 通称トラッチにそっくり)とことばを交わしたり、中軽井沢駅まで歩いて、いつもの2時の列車に乗って、FM軽井沢へ。

 11日に、古書店追分コロニーで見つけた冒頭の本を紹介した。作者の野尻抱影先生は、なぜか小学校の時、一時的に?校長先生だった。ある日の昼休み、突然教室に現れて新しい校長先生だと紹介され、みんなと一緒に給食を食べて、ひとことふたことことばを交わし、それっきり、なんの思い出もない。私が虚弱児で(誰?笑っているのは)出席日数が足りないくらい休みが多かったから、ずいぶん損をしているのだけれど、野尻先生の思い出が、この日しかないというのもそのひとつだ。

 この『ロンドン怪盗伝』というのは、野尻抱影の本という4冊のシリーズの4冊目で、なぜかこの一冊だけ星の話が出てこない。内容も私にとっては懐かしいテーマばかりで、ロンドンの地名が次々出てくるのも当然そうだが、小学生の頃読み耽っていた『宝島』の翻訳についての話が出ているのも嬉しい。

 私の読んだ講談社版では「10と5人で棺おけ島によお~、流れ着いたがラム酒はひと瓶よ、ヨッホホのホイ」という訳で、この歌が印象的だったのだが、まさにこの翻訳についての話で、おまけにこの歌を野尻先生ご自身も、勝手な節をつけて歌っていらしたという。「も」というのは私も自分で節をつけて、良く歌っていたから。もうひとつおまけに白状すれば、この歌詞のお陰で『15少年漂流記』と『宝島』のストーリーが完全に混ざって記憶されてしまったのだ!

 この話を始めたら、FM軽井沢の宮尾さんも「なつかしいぃ」と天井を仰いでいたが、この分厚い一冊、読む人によってだろうが、多くの人にとって懐かしい本になると思う。

 FM軽井沢から帰宅して荒木さんに電話すると、今日の藤井さんのオペラコンサートは16時からだと言う。例によって午後6時だと思い込んでいたので、慌ててそのまま飛び出した。藤井さん以外の若い2人の歌手は、多少練習不足気味で残念だったが、藤井さんの企画、選曲、MCが良くて、来年も参加したいと、みんなに思わせる会になった。『さだこ』から作曲された「祈り」という曲を歌われたが、できれば絵本の『さだこ』の読み聞かせを入れたほうが良い。意外に読まれていない絵本だから、知らない人も多いので。

2010年07月21日

祭のあと

 一昨日、第5回せせらぎ文庫フェスタが終わった。2,3,4回と続けて協力して下さった瀬名恵子さん、杉山恵子さんのペア?が、2人とも家庭の事情で不参加だったのは、なんだかとても寂しかったが、その代わり、末吉暁子、押川理佐の親子組と、今月は最も忙しいはずの松本猛さんが加わってくださって、フェスタ第3日目は、とりわけ賑やかな1日だった。

 図書館員の方の参加が多かったので、ふと思いついて、読み聞かせの終わった松本猛さんに、和室で大人達と話していただいたが、他人とコミュニケーションが取れなくなってきている現代の子ども達の話になり、本のネットワークを作って、読書案内と同時に地域の子ども達とのコミュニケーションをと、具体的で前向きな、地域教育の話を聞くことが出来た。

 来年から、3日間のフェスタの夜を使って、大人たち向けの、フェスタの先生方との交流の場が作れると良い、という意見がでたりしている。

 来年のことをいうと鬼が笑うというが、子どもの部も、瀬名さん杉山さんが、今年のメンバーに加わるとどうなるだろう、と具体的に考えると、いろいろに夢が広がる。今までのように、一日に何もかも、というのではなくて、その日によって組み合わせを変えれば良いのだろうが、どうも私は、お祭りはお祭りらしく、毎日がオールスターメンバーズで大騒ぎしたくてならない。

 今回は、せっかく孫が来軽していたのだが、なにやら機嫌が悪くてチラッとしか来てくれなかったのが残念。2泊3日の内に2回も来てくれたのだから感謝しなければいけないのだが、子どもの立場から、腹蔵の無い意見が聞きたかったものだから・・・・。子どもは正直だから、なんでも本当のことを言う、と思うのは間違いで、親がいたり、親を通したりすると、大人より気を使ってしまって、褒めるにせよ貶すにせよ、なかなか本音は聞かせてくれない。直接、一対一で聞くのが一番良い。

 西区では積極的にせせらぎ文庫を応援してくれていて、支援も増えたし、忙しい役員の方々が覗きに来てくださったし、真柄さんのお陰でお母様の参加も多く、荒木さんには相変らずお弁当の購入までお願いしてしまって、皆様のご好意に甘えている。

 個人的には、明日が私の21回目の誕生日。茶英会の仲間達は、丁度17日から裏千家のハワイセミナーに参加中。「一緒に来ればみんなで祝ってあげるのに!」といってくれたけれど、ハワイ行きを諦めた価値はあったと思っている。

 内容の詳細は、もう少し体調が戻って、頭の整理がついてから。
先ずは今度の日曜日、25日の2時過ぎからの「魔法使いの本棚」をお楽しみに。
宮尾さんはじめ、FM軽井沢にも、大変お世話になりました。
皆様、応援をありがとうございました。

2010年07月17日

せせrらぎ文庫フェスタ開幕!

 待ちに待った、というか、とうとうきてしまったというか、例年より準備不足の観がぬぐえないまま、第五回せせらぎ文庫フェスタが開幕した。準備が遅れたのは、政治のせいにするわけではないが、やはり参院選が原因で、投票所に使われる西区公民館が、選挙の日取りで使えなくなるからに他ならない。

 準備不足になったのはもっぱら宣伝の方で、いつもほど別荘も回れなかったし、落葉松の幹や電柱にポスターも貼れなかった。例年のお祭りの日に選挙が重なったからというので、お祭りと花火が、せせらぎ文庫フェスタ専用だった海の日の連休に、引っ越してきてしまったせいで、やる気が萎えた、ということもある。

 それかあらぬか、今日の午前中は子どもが11人、午後は4人しか集まらない。
ところが、手弁当で集まってくれたキャストは一向に手を抜かず、子どもが少ないから、より充実した内容になったと、喜んでいる。・・・・たしかに!

 明日と明後日、どんな子ども達が集まってくれるのか、また、新しく加わったキャストがどんなかつやくをしてくださるのか、それが楽しみ。夜空に溢れる花火が、せせらぎ文庫フェスタの開幕を祝ってくれている。

2010年07月13日

せせらぎ文庫フェスタ

 フェスタの準備を口実に、一ヶ月あまりもブログをサボってしまいました。その上、フェスタの詳細はブログで、などと言っているのですから、困ったものです。

会場は 軽井沢千ヶ滝 西区公民館       主催 西区公民館
費用は 子ども 300円   大人 500円    共催 国際子ども文庫の会

 とにかく、3日間のタイムテーブルだけでも、今日中にお伝えします。但し、出演の先生方には、お昼休みなど、長めの休憩を取って、軽井沢を楽しんで頂きたいと思っているので、美術館への往復の交通状況などで、大幅に入れ替わることもあります。
皆様手弁当で来て頂いておりますので、ご理解のうえ、ご了承ください。

まず、お話と語りは、かんなりまさこ氏(ねりまおはなしの会)、読み聞かせ、松本猛氏(元ちひろ美術館館長)(子ども達への読み聞かせのあと、和室で大人の方たちとの交流会もお願いしてあります)、末吉暁子氏『ざわざわ森のがんこちゃん』(NHK放映中)他、滝本つみき氏『アメリカからきた魔女』フォア文庫、押川理佐氏(絵本作家)、精巧な折紙の作り手、刈田すみ子氏、英語の絵本の読み聞かせ、グレース宮田氏(明治大学等兼任講師)!

 例年おなじみの先生方は、今年は名前を変えてのご参加! 面白理科実験:ジニアス円谷こと円谷秀雄先生(元学芸大学付属竹早小学校教諭)、社会科体操・いろはDE歴史:マイティ松井こと松井聡先生(市川市教育委員会)、お日様のポップコーンとどんぐりのクッキー:ポプコ円谷こと円谷加陽子先生(栄養学教授)。以上、計10名


     7月17日(土)    7月18日(日)      7月19日(海の日)

10:15  受付開始       受付開始        受付開始

10:30  滝本つみき      かんなりまさこ     末吉暁子
       Tanko                      押川理佐
10:45                   

11:00  マイティ松井     ジニアス円谷      松本猛
                            (大人向けは和室にて)
11:15               ポプコ円谷       ポプコ円谷
                                 Tanko
11:30  刈田すみ子      刈田すみ子       刈田すみ子

11:45                         

12:00  滝本つみき      グレース宮田      押川理佐

12:15  本の抽選会      かんなりまさこ     末吉暁子

12:30  午前の部終了     午前の部終了      午前の部終了

13:30  受付開始       受付開始        受付開始

13:45

14:00  かんなりまさこ    かんなりまさこ     末吉暁子

14:15  滝本つみき      滝本つみき       押川理佐

15:00  グレース宮田     グレース宮田      ジニアス円谷

15:15  マイティ松井     マイティ松井            

15:30               ジニアス円谷      ポプコ円谷
                                   Tanko
16:00  刈田すみ子      刈田すみ子       刈田すみ子

16:15  かんなりまさこ    末吉暁子         押川理佐

16:30  本の抽選       本の抽選        本の抽選
     午後の部終了     午後の部終了      午後の部終了

以上、大体、こんな感じです。         お待ちしていま~す。

2010年05月09日

御柱祭りと森の妖精

 友人に誘われて、諏訪の御柱祭を見に行った。孫を連れて、中軽井沢から7;45のしなの鉄道に乗り、小諸で小海線に乗り換えて2時間かけて小淵沢まで。幼い頃は電車に夢中だった孫にとっては、これだけでも既に大冒険!私も10年前には沿線の高校に何回か小海線で通ったことがあるので、懐かしい旅だった。
 
 小淵沢まで友人がご主人様の運転でお出迎え。連休の大切な2日間を、我々二人のためにつぶさせるのはとても心苦しかったが、軽井沢で繰り返し放映されるニュースをみていて、同じ長野県なのだから実物が見たいなあ、という思いがあったし、以前にも泊めてもらった友人宅の居心地の良さも大いなる魅力で、丁度ひとりで遊びに来ていた孫共々、おことばに甘えることにした。

 小淵沢からそのまま車で茅野市と諏訪市の境界あたりへ(地名、方角のことは聞かないでね)。
まず、御柱が斜面を落とされた、小高い丘の上へ。御柱をつないであった杭、というより柱、を見た。
かなり高さがあり、急斜面だが、斜面の距離は短く感じられる。それだけ急だってこと?この逆落としポイントを案内してナンシーさんに説明してもらっただけで、ややこしい御柱祭の全景がよくわかった。

 そこから更に、今回の御柱曳航の通るドーロ、メインロードへ。ついたのは丁度昼休みで、曳航に携わる人たちが、長さが1キロくらいある2本の引き綱の間にシートを敷いて、小宴会を開いているのが面白かった。いよいよ御柱の様子を書こうと思ったら、もう、東京に帰る仕度を始める時間。
とにかく5月2日、FM軽井沢の「魔法使いの本棚」の時間に、携帯電話で実況放送をお送りした。

 

2010年04月24日

『ダンスのすきなジョせフィーヌ』鈴木出版など

 先週のFM軽井沢では『お話の毛布』(編物お好きなおばあさんが、近所の子どもたちにお話を聞かせるときに坐らせる「お話の毛布」を少しずつほどいて、村の人たちに、いろいろ編んでプレゼントする話)フェリーダ・ウルフ、ハリエット・メイ・サヴィッツ文、エレナ・オドリオゾーラ絵、さくまゆみこ訳、光村教育図書、と『いもほりバス』(いもほりバスは不思議な仕掛けのあるバスで、そのバスでいもほりに行って、大きな大きな焼き芋を掘り出し、噴火口で焼き上がった焼芋をたべる話)藤本ともひこ 作・絵と『ダンスのすきなジョせフィーヌ』(ダンスのすきなカンガルーのジョセフィーヌが、とうとうバレリーナになる話)ジャッキー・フレンチ作、ブルース・ホワットリー絵、三原泉訳、鈴木出版の3冊を紹介しました。この3冊は、今日、せせらぎ文庫に入れます。このところ、せせらぎ文庫には毎週新しい本が仲間入りしています。是非覗いて、どこにあるか、見つけて下さい。

 ジョセフィーヌのついでに、5月3日のマキアサミバレエ団の五反田ゆうぽーとホールの公演「眠れる森の美女」もご紹介。『眠れる森の美女』は5大バレエのひとつ。『白鳥の湖』『くるみ割り人形』と共に、ぜひ子どもに見せておきたいバレエです。今回は、オーロラ姫に呪いをかける悪い魔女カラボス役に前回も怪しい美しさで客席を魅了した保坂・アントン慶を起用。物語性を高めています。アントン慶は、スウェーデン人とのハーフで舞台姿も美しいのですが、内面的にも優しく包容力があって企画力、実行力も伴う素晴らしい男性。今年の3月3日に結婚して私生活も充実。本人の主宰するミヤキバレエ学園と共に、これからの日本のバレエ界をリードしてゆく存在でもあるのです。

2010年04月17日

ミステリアスな一冊(先週のFM軽井沢。ハメットとヘルマン)

 一句、できました。「春の雪 ひねもす ぽたり ぽたりかな」。またぁとか言わないで!起きてみたら、一面の雪!銀世界、などというシャープな感じではなく、春の雪は積もっていても温かい。家の中も昨夜の降り始めよりずっと暖かくて、今朝は8時までぐっすり眠ってしまった。
 トントントン、というノックの音で起こされ、出てみても誰もいない。雪の上に足跡もない。これだから私は雪が好きだ。何かあれば、跡を見ればすぐ分かる。で、ノックの主は雪。落葉松の枝で溶けた雪が、トタン屋根にトトトト、と落ちる音。どの木も枝に10センチもの雪が積もって重そうだが美しい。その雪が暖かい朝の光に少しずつゆるんで、かたまりのまま、ふわり、ぽたり、と落ちてくる。10センチずつのかたまりが、ぽたりぽたりとおちているから、冒頭の句である。やっとわかった?ひねもす ふわりふわりの木もあるの。

 さて、先週のFM軽井沢では、不思議な本を紹介した。ダシール・ハメット『闇の中から来た女』集英社。ハメットらしいハードボイルド。ストーリーを書くわけにはいかないが、ルイーズという女と、ブラジルという男の物語で、熱中して読んで、読み終わって「ひとつの人生を読み終わった」というそこはかとない満足感が残る。良い本といっては表現がおかしいかもしれないが、1200円という代価を支払うだけの充足感は充分に得られる。

 では、何がミステリアスか? 個人的なことだが、我家にはあり得ない本なのである。私と次男は、単行本はほとんど買わない。良い本ならきっと文庫本になるから、それまで待つ。(『ハリーポッター』みたいに、文庫本にしないというのはルール違反な気がする。買ったけど!)。長男も単行本はドキュメンタリーのようなものしか読まない。息子達の父親も、そんな本は知らないという。
 この本は何年か前に現れて、2階に行ったり、階下に来たり、本棚に横になっていたりしていたのだが、いつの間にか居間の目に付く位置を転々とするようになった。10年近く見ているので、読んだような気になっていたが、数日前読み直す気持で開いてみたら、まだ読んでなかった!
 こういう本を、唯一単行本で読みそうなのが、1984年に亡くなった母で、SFやミステリー、何でも読む人だったし、字の大きい単行本を読んでいたから、母が買ってきておいたのかもしれないと一度は納得した。しかし、奥付けを見ると、発行されたのは1991年である。さて、誰がこの本をここに置いたのか。

 この本にはもうひとつ、嬉しい不思議もあった。出会いである。
『闇から来た女』船戸与一訳 の「訳者解説」に、ハメットと一緒に暮らしていたリリアン・ヘルマンが与えあった影響について述べられているが、そこにヘルマンの自伝『眠れない時代』小池美佐子訳が2ページ近く引用してあるのだが、この本がせせらぎ文庫にいれてあるのだ。(今、雪の残る庭に、雉が3羽来ている!)
 せせらぎ文庫の上の方の本棚には、このあたりの第一世代?つまりおじいさんおばあさんの世代に面白いように、多少、マニアックな本も並べてあるが、この『眠れない時代』はその中の一冊。いつのことだか憶えていないのだが、若くて美しいこの訳者に、直接手渡された記憶があり、リリアン・ヘルマンという女性とハメットという粋な男に、興味を持ったキッカケでもあった。

 小池さんは高校の先輩なのでかかわりがないわけではないが、3年上なので同じ時期に通学していたわけではない。元々は男子校なので美人の誉れ高い小池さんは、3年下にも知れ渡っていたというだけで、友達をたどってみても彼女にはつながらなかった。でも、勇気を出して訳者の小池美佐子さんにv直接電話すると、彼女も勿論私を憶えては居なかったが、FM軽井沢で文章も読んでしまうかもしれないので、というと喜んで承諾してくださった。
 いくら話しても、いつ、どこで会ったのか分からないのだが、誰が置いていったのか分からない『闇の中から来た女』という一冊の本が、リリアン・ヘルマンを経由して、知っているけど知らない、話したことがあるのに記憶がない先輩と、出会わせてくれたことをとても不思議なことだと思う。

 実は小池美佐子さんとのつながりはもう一つあって、小池さんのお父様は、私たちの中学校の校長先生で、当時ツッパリのハシリだといわれていた私に、特別目をかけて下さっていたのだ。始まりは何のことでもない。学校の帰りに直接稽古に通うので、お腹がすくからと、学校の売店で帰りがけにパンを買うのが一部の女生徒の気に障って評判になったというだけのことだ。

 隣のクラスの女子に呼び出され、つるし上げに合うという噂が先に先生たちの耳に入ったらしく、つるし上げの当日、校長先生と理事先生が離れた所から現場を見守ってくださっていた。当の私は舞台度胸があったので、2~30人に取り囲まれても一向苦にならず、一段高い所に立って相手の言い分を聞いていたが、熊さんのように行ったり来たりしながら心配して下さっている校長先生が私からは良く見えて、心強かった。話合い?は無事に終り、それ以来、安藤尭校長は、機会を見ては私に話しかけ、道の向こうからでも手を振ってくださるようになった。友人が「いいわねえ、貴女って校長先生のほうから先に手を振ってくださるのねえ」と羨ましがられた。校長先生の愛情がなかったら、私は本当にツッパリになっていたかもしれない。その頃はせめてお年賀状を出す、という知恵もなく、特に親にも話さず、感謝の気持を伝えられなくて、ずっと心にかかっていた。小池さんにチラッとそんな話も出来て、このミステリーはハッピーエンドになったのである。

2010年04月05日

DoDaDancin' 槇村さとる作 集英社

 昨日の日曜日、FM軽井沢「魔法使いの本棚」は、数学教育学会で反響があった、という話から始まった。大阪教育大で、絵本作りを教育手段に取り入れているとのことで、作品集、というより、論文集のような体裁で、4年分の作品集を読むことができた。いずれも新鮮で、力作ぞろい。すぐにでも絵本になりそうな作品もある。

 近頃の若者は読解力に欠けるとわかっているのだから、高校生の数学指導にも絵本を使ってもらえば、もう少し日本の数学のレベルが上がるのではないだろうか。普通に考えれば、普通の教科書の代わりに絵本を使うといえばレベルが下がると見るのだろうが、漫画と違って優れた絵本なら、プラスアルファーの力が大きい。そこまでわかってもらえたかどうか、多少不安だが、リアクションがあっただけでも嬉しいのに、送られてきた絵本の卵が、かなり大きくて養分も溢れていたのがとても嬉しかった。

 放送のあとバレエを見に行くので、バレエにかこつけて初めての漫画、バレエ漫画の 『DoDaDancin’』 を取り上げた。一緒にバレエを見に行く友人がまとめて貸してくれたもので、アキレス腱を切った入院の2週間に9巻まで読み、今回は続編の「ヴェネチア国際編」という国際バレエコンクールへの練習風景、8巻のうち6巻までを読んだ。
 バレエ漫画は、本当に絵が大切で、トウで立っているのにあり得ない重心で描かれていたりすると、見るだけでしらけてしまうが、槇村さとるの絵は、いかにもバレエ的で、写真よりも躍動感があり、素直に楽しめる。

 子どもを漫画しか読まないような子にしないために、一時的に飽食状態にするのも良いと話したのだが、それには家庭ぐるみの協力が大切。我が家がその点成功したのは、家族4人が揃って同じ本の読み回しをした点が良い結果につながったと思う。どんな分野の本でも親が読まなければ、子どもに良い読書習慣をつけるのは無理。

 放送を終えて、久しぶりにジゼルを観に行った。5大バレエの中では小品ながら、私の一番好きな曲だ。村娘のジゼルが、幸せな気持ちで占う花占いと、恋人に裏切られたと知って、心を狂わせて繰り返す花占いの仕草と、霊になってから踊る同じフレーズの曲が、いつまでも心に残る。

 五反田のゆうぽーとホールは劇場として落第!足弱な人に冷たくて、見上げるような外階段の横のエスカレーターは下りのみになっている。同じビルのホテル側からも入れないように、ホテルのエレベーターは嘗てはつながっていたゆうぽーとホールの階には止まらなくなっている。
 中に入ると案内人も不親切で、私が荷物と格闘しながら劇場内の階段をがくんがくんと降りているのに、足が悪いと誰でもわかるのに、澄まして懐中電灯で照らすだけで、持ちましょうかと声もかけない。あんなホール、もう見に行くものかと思うけれど、5月22日、23日と『眠れる森の美女』があり、アントン・慶が魔女カラボス役を踊るというから、うーん、カートを置いて、杖を持ってでも観にゆこう。

2010年03月29日

『森の謝肉祭』 舟崎克彦文 野村直子絵 パロル舎刊

 3月22日は、『森の謝肉祭』の出版記念会だった。恵比寿の駅から徒歩5分ほどの、Malleという小じんまりしたギャラリーだったが、なぜか森の中の喫茶店のようなぬくもりがあって、作品の雰囲気に良くあっていた。美しい女性がいると思ったら、画家の野村さんだった。誰も紹介してくれなくても、壁に並んでいる作品を見ればすぐわかる。やがて舟崎先生が現れて、紹介してくださった。その会には当然のことながら?出版元のパロル舎の社長もみえていて、いろいろな話を伺うこともできた。有意義な一日。

 さて、この絵本は子どもにも楽しいが、大人にはさらに面白い。
森の家に引越してきたマリィちゃんのもとに、いろいろな動物たちがおとずれる、という筋なのだが、赤頭巾と狼、というか、不思議の国のアリスというか、一風変わった雰囲気がある絵本である。

 訪れてくる動物たちはネズミ、ウシガエル、ウサギ、ネコの面々だが、みんな食べてしまいたいほどかわいいマリィちゃんを一口食べてみたいと思っている。
 どのページも野村直子の精緻な筆づかいでこの世のものとは思えない美しい世界を描き出している。とりわけ「なんだか へんなヒトたちばっかりね・・・」の一言で始まるページのマリィちゃんが美しい。この絵が見たい方は購入していただく他はない。

 
 

2010年03月19日

数学教育学会のために。No3 3世代文庫とは。

 3世代文庫のアイディアは、1988年、ICBA10周年記念フォーラムがきっかけになった。フォーラムのテーマは「どうすれば子ども達を本の世界に取り戻せるか?」だった。フォーラムには、日本の教育界、児童文学界からはもちろん、イギリス、カナダ、オーストラリア、メキシコから、児童書専門の司書など、子どもの読書指導の専門家を集め、フロアにも、多くの外国人を含む百数十名が参加して、熱心な討論が続いた。

 そして出た結論は、TVに何かを申し入れようとか、もっと良い本が出版されればなどという、ありがちな上滑りな意見ではなく、至極当たり前な「大人がもっと本を読まなければ、子どもも本を読まない」であった。外国人妻の会から参加した女性の「夫は仕事ばかりで家に帰って来ない。いったいどうやって、子どもを育てれば良いのだ」という涙の訴えに、一同は心を打たれた。

 日本人、特に男性は社会人になると本を読まなくなる。特に家庭では本を読まない。女性も然り。子どもが出来ると、雑誌や実用書ばかりで、本を読まない。生活ばかりに追われて、読書によって自分の世界を広げる楽しさを忘れてしまう。大人が、子どもの前で本を読まないから、子どもは本を読む楽しさを知らずに育ってしまう。子どもを本の世界に取り戻したければ、大人がもっと本を読まなければ、というのが結論だった。
 フォーラムはそこで終わってしまったから、我々は「大人がもっと本を読もう!」というアピールを出して終わったわけだが、私の心の中には、それでは具体的に、どうすればよいのか、という疑問が残ってしまった。

 大人が家庭で本を読む、といっても、仕事から疲れて帰ってくる親たちが、子どもの前で本を読むだろうか?それでは休日に読むとして、子どもの前で、落着いて本が読めるだろうか?大人が夢中になって読まなければ、子どもが釣られて読むわけはない。
 かつて我家では、休日は家族揃って貸本屋に行って、両手にマンガを抱えて帰って、次の休日まで必死で何十冊ものマンガを読む、という作業を、数週間続けたことがある。子ども達にマンガを飽食させようという下心もあったのだが、親のほうも「近頃の漫画」に興味があったので、親子共に、結構楽しめる数週間であった。

 その頃のマンガには『のたり松太郎』など、親子で楽しめるマンガが沢山あったからでもあるが、親子が同じ本をやったりとったりして読むのは楽しい。特に感想を求めるわけでもなく、誰がどのマンガを借りてきたか確かめもせず、ひたすらに借りられるだけ借りてきて、むさぼり読んだ。

 それと同じ感覚の文庫はできないか? しかし、マンガというのは両刃の剣で、「本」というものに子どもを近づけるのに良い手段ではあるが、そのまままともな本に移らずに、マンガしか読まなくなってしまう可能性もある。そこで私は、せせらぎ文庫に本を選ぶに当たって、ターゲットを30から40台の父親に絞った。子どもの手を引いて来た父親が、おやっとつい手にとってしまうような本を並べた。その下の段には、30代の女性に面白そうな小説。隣の棚には、リタイヤーした祖父母が、ゆとりの人生でもう一度読んでみたくなる、学生めいた本も並べてみた。近頃、子どもの本は良いものがたくさんある。読ませたくない雑な編集の絵本さえ避ければ、子どもの本棚は、時間に従って充実してくる。

 軽井沢という町の特殊性から、目論見が当たったと思えるのは、まだ夏休みだけなのだが、夏になると、私が夢みたとおりの3世代の家族が、5,6人ずつの家族が、ぞろぞろと狭い文庫に入ってきて、各々好きな本を選び、大人は自分の分は借りる手続きをしておいて、孫や子どもにねだられるままに絵本を読み聞かせている。

 適度に狭い部屋に、祖父母と両親と、叔父、叔母や従弟達と膝小僧を並べて本を読む子ども達を見ると、とても豊かな気持になる。日本の未来も、捨てたものではない。これが世界初の3世代文庫、せせらぎ文庫である。

 蛇足ながら、毎年、海の日の連休には千が滝西区の公民館で「せせらぎ文庫フェスタ」が開催され、絵本作家の読み聞かせやお話のほか、面白理科実験、社会科体操、折紙、英語の絵本の読み聞かせまで、盛りだくさんな企画を、3世代で楽しめる。